セブン-イレブンの7NOW全国展開へ!拡大するクイックコマースへの“懸念”とは

2024/04/03 05:54
中井 彰人 (株式会社nakaja labnakaja lab代表取締役/流通アナリスト)
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Qコマースの変動費化モデルに潜む死角

 クイックコマース事業においては、ダークストア、物流人員のコストを自前で抱えることは一定の固定費負担が生じることから、損益分岐点を押し上げることになる。ただ、食品店舗の密度が高いこの国ではまだそこまでのマーケットが十分に形成されていないようだ。ピッキングのみのスペースに賃料を払うよりも、リアルで収益を稼ぐ既存店舗を活用したほうがコストを変動費化できる。そして配送人員のコストもデリバリープラットフォーマーを活用すれば変動費化できるのである。

 さらに言えば、即配は計画配送と異なり、配送動線はほぼ1件ずつで配送後はいったん拠点に戻ることになるため、拠点からの半径を長くはできない(だからコンビニエンスストアの店舗が向いている)。消費者の生活の中にクイックコマースニーズが定着するようになれば、自前のインフラ投資もあり得るのであろうが、当面は変動費化モデルによって浸透を図っていく手法が主流になるように思われる。

ウーバーイーツの配達員

 ただ、配送人員のコストダウンに関して、デリバリープラットフォーマーと連携するという手法を取らざるを得ないことに、個人的に若干の危惧を覚えている。自前なら固定費であるのに、変動費化してコストダウンするというのは、固定費リスクを誰かに転嫁しているという解釈もできる。

 デリバリープラットフォーマーから配送業務を請け負うのはギグワーカーといわれる個人事業主である。なぜ、コストが安くなるかといえば、仕事の自由度などの提供と引き換えに、デリバリープラットフォーマーは固定した雇用リスクを負わないで済むからである。

 ギグワーカーについては、労働者とは見なされてはいないが、海外ではプラットフォーマーとの力関係からみて一定の保護を制度化すべきという議論は存在する。最近では米国、EU(欧州連合)においても一定の条件を満たせば、企業の従業員と同様の待遇を受けられるようにするという判断もなされているようであり、ゆくゆくは日本でも同様の方向性へと向かうことになるだろう。

 コストダウンのためにプラットフォーマーを介して人件費を流動化すればよいといったビジネスモデルであれば、持続可能性にも懸念が生じる可能性があるだろう。

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記事執筆者

中井 彰人 / 株式会社nakaja lab nakaja lab代表取締役/流通アナリスト
みずほ銀行産業調査部シニアアナリスト(12年間)を経て、2016年より流通アナリストとして独立。 2018年3月、株式会社nakaja labを設立、代表取締役に就任、コンサル、執筆、講演等で活動中。 2020年9月Yahoo!ニュース公式コメンテーター就任(2022年よりオーサー兼任)。 2021年8月、技術評論社より著書「図解即戦力 小売業界」発刊。現在、DCSオンライン他、月刊連載4本、及び、マスコミへの知見提供を実施中。起業支援、地方創生支援もライフワークとしている。
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