イトーヨーカドー&オニゴー、ネットスーパー“継続”のための要諦とは?

宮川 耕平(日本食糧新聞社)
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イトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)のネットスーパー事業は、2025年2月にONIGO(東京都/梅下直也社長:以下、オニゴー)社との共同事業に切り替わります。横浜の専用センターは稼働から2年足らずで閉鎖、自前のラストワンマイルも断念しましたが、それでもネットスーパーを継続するために、即時配送のオニゴーと資本業務提携しました。オニゴーにとっても、イトーヨーカドー93店舗からのラストワンマイルを担う事業は、継続可能なものでなければなりません。「その要点は何か?」 いろいろあるわけですが、とりあえず一定の客単価は必須のようです。

事業の継続を模索したイトーヨーカ堂

 2024年12月上旬の会見で、イトーヨーカ堂の伊藤弘雅取締役は自前のネットスーパーを断念することについて「苦渋の決断」と繰り返しました。この決定はさまざまに言われるでしょうし、会社を取り巻く環境も流動的な状況にあって、「質問への回答を差し控える」というシーンも何度かありました。

 それでも何とかネットスーパーを継続する方法を探したという伊藤取締役に、「なぜ続けなければならないのか?」という趣旨の質問も出たわけですが、そこに顧客がいる限り、その要望に応えたいと思うのがイトーヨーカ堂に限らず小売業の気質でしょう。商売は損得勘定ですが、商売をしたい小売業のマインドは損得勘定だけではないと私は理解します。

 ネットスーパーで買いたい、自宅に届けて欲しいという顧客の要望に応えるべく辿り着いた方法が、オニゴーとの共同事業でした。伊藤取締役は「ビジネスとして継続する」と、これも何度か繰り返しました。ここから先は、もちろん損得勘定の話です。

 ネットスーパーの情報システムはオニゴーが提供します。サービス名を「ONIGO上のイトーヨーカドーネットスーパー」とし、既存のオニゴーとは別に新規アプリを立ち上げます。イトーヨーカ堂は商品を供給し、オニゴーが店舗でのピッキングから配達までの業務を担います。

 この仕組み、事業として継続できるかどうかは、オニゴーが担うラストワンマイルの採算が取れるかどうかにかかっています。店舗の客数と違い、宅配は件数が増える分だけ人手を要します。ここで生産性を上げる鍵は、1件あたりの客単価です。

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