D2Cとは?B2C、SPAとの意味の違いやブランドの成功事例について詳しく解説
D2Cは、消費形態が変化したことにより、必然的に拡大している新時代のビジネスモデルである。ブランディングとして大手の企業にも採用されているD2Cについて、実例も交えて詳しく解説する。
目次
D2Cとは
D2Cとは「Direct to Consumer(ダイレクト・トゥ・コンシューマ)」の略である。製造者自らが、商品の企画・製造・販売まで行い、広告代理店や小売店を介さず消費者とダイレクトに取引するビジネスモデルだ。主にSNS、ECサイトなどを通じで顧客層にリーチするこの商法は、近年増加傾向にある。
ECサイトによる直接販売
EC(「Electronic Commerce」の略)とはインターネット上で商品・サービスの売買を行うプラットフォーム。「ECサイト」は、D2Cにおける主な販売チャネルとして利用されている。
D2C商法では、販売業者を通さず自社でECサイトを運営し、直接販売しているところがほとんどだ。従来必要とされてきた中間業者との信頼関係を築かずとも、販売できる手軽さや顧客の傾向を把握しやすいメリットがある。
ミレニアル世代がターゲット
D2Cの顧客は、主に1980年~1990年後半までに生まれたミレニアル世代が中心だ。消費に慎重な一方で、ネット上での購買に抵抗がなく、ダイバーシティやエコに感度が高い新しい消費価値観を持ち合わせている。
コンテンツマーケティング
マーケティングは、2000年ごろから主流となったメルマガに加え、LINE活用、あるいは、オウンドメディアでのコンテンツ配信などユーザーに届きやすい手法が目立ってきた。
YouTubeなどの動画配信で、視覚に訴える明確なメッセージを発信する手法も増加傾向にある。D2Cでは、見込み客の獲得およびコミュニケーションをネット上で完結するケースが多い。
D2Cと従来のB2C、SPAの違い
従来のビジネスモデルであるB2C、SPAはD2Cと混同されがちだ。B2C(BtoC)は「Business to Customer」の略で、企業が消費者に商品・サービスを提供するビジネスモデルである。一方で、SPAは「Speciality store retailer of Private label Apparel」の略で、企画・製造・販売を自社ですべて行うパターンである。前述の2パターンとD2Cとは以下の点で異なる。
B2C | SPA | D2C | |
提供主体 | 企業全般 | 製造小売業 | 製造者 |
用語の使われ方 | ビジネス全般の取引に使う | 主にアパレル分野に使う | 主に商品開発や製造販売の手法を表す |
販売チャネル | 代理店・小売店経由 | 自社の店舗が軸 | ECサイトが軸 |
代表例 | 旅行代理店(例:JTB)、自動車メーカー(例:トヨタ)、飲料・食品メーカー(例:キリンビール)、コンビニ、百貨店、その他多数 | Uniqlo、GAP、ZARAなど | ※D2Cの事例 参照 |
D2Cが注目される背景
近年、多くの企業も注目しているD2Cビジネスモデル。マーケティングにおけるD2Cの関心が高まっている背景について見ていこう。
消費者との直接的なコミュニケーション機会の増加
D2Cが注目される主な理由に、スマートフォンやSNSなどの普及がある。デバイスやフォーマットの進化により消費者との直接的かつ双方向のコミュニケーションが、非常に容易になった。インタラクティブな関係を消費者と築くことができ、顧客のニーズを商品開発にも反映できるチャンスが高いのがメリットだ。
消費者の行動・ニーズの変化
D2Cの広がりは、コンシューマーの行動とニーズの変化とも関係が深い。購入者の口コミや画像をSNS上でシェアすることは、消費者の購入体験の一部となってきている。実店舗では、商品を確認するに留まり、ECサイトで改めて購入するという消費者も多い。
またサブスクリプションの普及により、「所有する」より「利用する」価値観も一般化しているのではないだろうか。消費者の多様なニーズを把握する機会が身近になったことから、ニッチでユニークな商品開発にも貢献しそうだ。
デジタルマーケティング活用による広告の効率化
D2C拡大の背景では、AIなどを導入した広告戦略などに見るテクノロジーの進化を語らずにはいられない。アルゴリズム解析などのツールでは、データの分析を基に、購買層ターゲットに直接アピールすることができる。デジタルフォーメンションにより、業務の生産性やコストといった既存の課題が格段に改善している。
D2Cのメリット
D2Cのメリットは主に5つある。自社でも実施すべきか判断するためにも、ぜひ確認していただきたい。
利益率・収益性が高い
D2C最大のメリットは、販売者が中間業者を介さず開発から販売まで一貫することによる、利益率の高さだろう。多くは自社のECサイトから販売するため、管理や運営にかかる手数料なども節約することができる。
高品質の商品を低価格で提供できる
D2Cでは開発から販売を統括するため、製品自体の品質を向上することができる。こだわりの素材や独自の技法など、価格を抑えたままで付加価値のある商品開発に取り組むことが容易となる。
売り手のビジョンや思想を顧客に直接伝えられる
商品やサービスでしか表現することができなかったメーカー側のビジョンや思想を、顧客に伝える機会が増える。商品提供に至るまでの経過を可視化し、消費者の価値意識に訴えることができるのがメリットだ。
顧客データを収集できる
ECサイトやSNSを通じて顧客とのインタラクティブな取引をすることで、データの収集が容易になる。顧客データの収集は、潜在顧客の獲得や二次収益などにつながる重要なデータベースとなる。
顧客との関係構築によるブランドロイヤリティ向上
D2Cにおいて、過去のブランディングと最も異なるのが、顧客のロイヤリティの向上である。顧客がブランド性に共感し、参加しているという意識を助長するため、愛着と忠誠心が湧いてくるためだ。
D2Cの企業事例
D2Cの導入により、成長を続けているビジネスを実例で解説しよう。
Shein(シーイン)
「Shein(シーイン)」は、売上高1兆円を突破する中国最大のファストファッションブランドである。同社の顧客はプチプラを好むミレニアム世代。デジタルネイティブの彼らは、モノよりも心の豊かさに価値を感じ、貧富の差に関係なくコストエフェクトを重視する傾向がある。
また、小口にも即時対応できる製造網と1日1000点を投入する驚異のスピード感がSheinを業界のトップに押し上げている要因といえそうだ。
ストライプインターナショナル
ストライプインターナショナルは、2021年初頭にミレニアム世代をターゲットにした女性ブランド「SLURR(スラー)」をローンチ。販路は自社が運営するECサイトと「ZOZOTOWN」のみに絞ったD2C商法に特化した。
ブランド立ち上げに先駆け「Instagram」や「Note」を通じ、開発段階でユーザーの意見を盛り込んだ顧客目線のブランディング構築を実践している。同社は、ミレニアム世代の流行を先導するインフルエンサーをブランマネージャーとして迎えたり、QR(クイックレスポンス)が実現できる生産体制を強化したりと100億円規模のビジネス拡大を目指している。
ストライプインターナショナルのD2C事例について詳細はこちら
ベースフード
ベースフードは、サブスクリプション型の宅配事業を展開している。販路を公式サイトでの通販メインに絞り、フードトラックの出店やイベントで無料配布するなどの知名度向上に努めてきた。
同社は、Instagram投稿による食べ方の共有でリピーターを獲得し、「Base Food Labo」と名付けたコミュニティも運営。購入者が商品だけでなく、体験や意見を共有できる「リピート施策」に成功しているD2Cの最たる事例といえよう。
そごう西武
そごう西武は、メディア型OMO(Online Merges with Offline)店舗「CHOOSE BASE SHIBUYA」をオープンした。ブースには販売員を配置せず、QRコードの活用で購入商品を持ち歩くことなく回遊できる仕組みになっている。購入商品は、ECサイトとの連動により、自宅に配送することも可能だ。
運営チームは、ECサイトのインフラを提供する「STORES(ストアーズ)」の協力を得て、顧客データやトラフィックを収集し、ブランドへのフィードバックなどに役立てるとしている。
ロッテ
ロッテは、オンライン限定洋酒入りチョコレートシリーズ「YOIYO」を発表した。知名度を確立している大手メーカーが、D2Cで新ブランドをローンチしたのには、3つの理由がある。1つ目は、D2Cの特色ともいえる熱いファンの構築だ。2つ目に、ECなら通年販売できる消費期限への課題解消。3つ目に、世相を反映した購買層の獲得だ。
ロッテの洋酒入りチョコは、2019年より急激に伸びているエリアだ。D2Cを導入したことで、生産者と消費者の距離感が縮まり、ブラインドスポットを残さない細分化戦略を可能にしている。
大日本印刷
大日本印刷(DNP)は、D2C事業を統括的にバックアップする「D2C支援サービス」を開始した。同社は、製品のデザインを長年手掛けてきた経験から、事業戦略やプロモーション、物流やDNPリソースの活用まで、ECエコシステムのフルフィルメントサービスを担う。
D2Cを導入するにあたり、躊躇してきた企業にとって、ワンストップで総合運用を頼れるサポートは、安心感が高い。
D2C成功のポイント
D2C成功の鍵はこれまでのマーケティング手法から視点を変えるべき点にある。意識すべき3つのポイントを整理しておこう。
顧客体験を充実させ満足度を向上させる
D2Cでは、顧客のニーズは売り上げを左右する。ツールやシステムを用いて、より顧客にマッチしたものを提供していく必要があるだろう。
顧客のニーズを商品に反映する
インタラクティブに顧客とのコミュニケーションができるD2Cでは、顧客の行動をダイレクトに察知することが重要だ。コンシューマーの要望がECサイトで反映されるようなエコシステムの構築にも注力するべきだろう。
顧客とのコミュニケーションツールとして媒体を利用する
D2Cでは、企業側がアドバタイズするこれまでの一方通行発信という概念を捨てなければならない。SNSなどを通して顧客の意見を知る、共感できる場を育てるといった相互関係を築くことが大切といえる。
D2Cはブランディングのあり方を変えるビジネスモデル
D2Cは、ブランディングの手法として徐々に当たり前になりつつあるビジネスモデルだ。マスプロの時代から、消費はこだわりと関連性の共感というメンタルのステージに突入している。
市場トレンドが急速に変化する中で、ビジネスのあり方を消化できず課題を抱えている企業も多いはず。ぜひ、紹介した事例やポイントを参考にD2Cを検討してみてほしい。
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