「デジタル化と小売業の未来」#3 消費者は来店前に買うものを決めている

望月 智之 (株式会社いつも 取締役副社長)
Pocket

ECなどのデジタル化が小売業に与える影響やその対応策などを紹介し、これからめざすべき小売業の姿を提示する連載「デジタル化と小売業の未来」。2では、消費者の買物プロセスの変化について解説しました。今回は、消費者の来店前の意思決定プロセスがどのように変化しているのかを説明します。

recep-bg / istock
recep-bg/istock

顧客は来店前に商品を検索している

 Google2011年に提唱した「顧客が商品を購入する際の行動に関する概念」の1つ、「ZMOT」という言葉をご存じでしょうか。

 ZMOTは、「Zero Moment Of Truth」の略で、「顧客は事前に商品についてインターネットで調べており、来店する前にはすでに購入するものを決めている」というマーケティング理論です。インターネットが普及してからは、店舗に来る前(Firstの前段階のZero)の段階で購入決定をするとして、現在のマーケティング戦略に大きな影響を与えています。

Googleが2011年に提唱した「顧客が商品を購入する際の行動に関する概念」の1つ、ZMOT
Googleが2011年に提唱した「顧客が商品を購入する際の行動に関する概念」の1つ、「ZMOT」

 ZMOT以前には、世界的な消費財メーカーのP&GProcter & Gamble)が提唱した「FMOTFirst Moment Of Truth)」というマーケティング理論がありました。こちらは価格や陳列・試供品などを中心とした「店舗でいかに購買決定させるか」という考え方を示した理論です。

 これまでは、商品の詳細な情報が事前にない状態でスーパーに行き、「テレビCMで見たなんとなく知っている商品を購入する」という直線的な意思決定がなされるケースが多くありました。しかし、次第にテレビCMに莫大なコストを投下しても思ったように売上を伸ばせなくなります。04年頃のFMOTの時代になると、店内の競合商品に勝つため、パッケージやPOP、商品ディスプレイなどで差別化を図る店頭競争が激化しました。

1 2

記事執筆者

望月 智之 / 株式会社いつも 取締役副社長
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態