「和食さと」の全国出店とグルメ寿司の海外展開に本腰! SRSホールディングスの成長戦略

構成:松岡 由希子 (フリーランスライター)
聞き手:雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集長)

「和食さと」「にぎり長次郎」「うまい鮨勘」「家族亭」「宮本むなし」「鶏笑」「ビフテキ 牛ノ福」「かつや」など、20以上のブランドの店舗を展開し、グループ全体で780店舗(20257月現在)を運営するSRSホールディングス(大阪府/重里政彦社長)。253月期の決算では売上高が対前期比12%増の674億円、営業利益が同24.2%増の26億円と過去最高を更新した。今後の成長エンジンに位置付ける「和食さと」の全国展開やグルメ寿司業態の強化など、成長戦略について重里社長に聞いた。

25年8月現在、全国に198店舗を展開する「和食さと」

消費者の節約志向により、“メリハリ消費”が顕著に

――外食産業を取り巻く現在の環境をどのように見ていますか。

重里 2024年度に入り、ようやくお客さまの流れが本格的に戻ってきました。外食への消費支出も堅調に推移しており、全体としてはコロナ禍前の水準まで回復しつつあると感じています。

 一方で、原材料費や人件費、水道光熱費の上昇に加え、円安の影響も大きく受けています。事業運営上のコストは、依然として厳しい状況が続いています。さらに、建築費の高騰もあって出店コストが増加しています。こうした中で、収益性をいかに高めていくかが、事業拡大を図るうえでの大きな課題です。

SRSホールディングスの重里政彦社長

 これまでは、価格改定に対してはお客さまから一定のご理解をいただけていたと認識しています。しかし、想定外だったのが米の価格高騰です。和食中心の当社グループにとって米は欠かせない食材であり、その影響は非常に大きいです。

 また、地政学リスクやアメリカの政策動向や関税の問題など、国際情勢の不安定さも今後の価格動向に大きな影響を与える要素です。こうした背景を踏まえると、今後、さらなる値上げや高単価商品の導入に対して、お客さまがどこまでついてきてくださるのか、不安を拭いきれないところがあります。

――コロナ禍を経て、外食に対する消費者の需要や行動に変化はありましたか。

重里 「外食を楽しみたい」という欲求そのものは、基本的に変わっていないと感じています。235月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行した後は、外食を楽しみたいという消費者の意欲が高まり、業界全体に活気が戻ってきました。当社でも、253月期第1四半期は想定を上回る好調なスタートとなりました。

 ただし、ここ半年ほどで状況にはやや変化が見られます。外食の頻度が緩やかに減少傾向にあり、とくに価格に対する消費者の反応がよりシビアになっている印象です。つまり、「ここぞというときは思い切って外食を楽しむが、普段はしっかり節約する」というように、使いどころにメリハリをつける傾向が顕著に見受けられます。

 

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構成

松岡 由希子 / フリーランスライター

米国MBA 取得後、スタートアップの支援や経営戦略の立案などの実務経験を経て、2008年、ジャーナリストに転身。食を取り巻く技術革新や次世代ビジネスの動向をグローバルな視点で追う。

聞き手

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集長

1987年石川県生まれ・東京都育ち。上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2015年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。編集記者、副編集長を経て25年4月より雑誌ダイヤモンド・チェーンストアおよびダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長。

これまで、企業特集(トライアルカンパニー、大創産業、クスリのアオキ、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。趣味は無計画な旅行とサウナ。最近は年齢相応(?)にランニングにハマり、フルマラソンも完走。

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