オムニチャネルの上位概念? 顧客体験を一新する「ユニファイドコマース」とは何か

崔 順踊(リテールライター)
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ネットと実店舗の顧客情報を統合し、個別化された最適なサービスを提供する「ユニファイドコマース」が注目されている。EC(電子商取引)事業の支援会社、いつも(東京都/坂本守社長)の望月智之副社長に「ユニファイドコマース」について解説してもらった。

herkisi/iStock

「オムニチャネル」と「ユニファイドコマース」

 ユニファイドコマースとは、一般的にはオンラインとオフラインがつながり、便利で一貫性のある、より良いショッピング体験を提供するという考え方である。いわばオムニチャネル(ネットと実店舗を統合した販売方法)の進化版だ。オムニチャネルが一般に「お客が店でもネットでも買える場所の提供」を意味していたのに対し、ユニファイドコマースは「買物の体験や買物のしやすさ」に重点を置いている。 

 とくにアパレル業界ではその活用が進んでおり、試着・接客・コーディネートの提案・購入・取り置き・チャット相談など接客周辺の領域で多く使われている。ユニファイドコマースの意義について、望月氏は「企業側と消費者側から見た視点では若干異なるので整理が必要だ」と話す。

 企業側から見ると、リアルタイムで店舗とネットの在庫が常に共有され、両チャネルの顧客データが一元管理されていることが必要で、この「在庫管理」と「顧客データ」の一元化によって「お客さまにリッチな買物体験が提供できる」(望月氏)。

 さらにお客の「購買情報」も店舗でもオンラインでも把握することによって、値引きや新商品の告知などマーケティングキャンペーンを最適化することができる。これらを全体的にシステムで統合することで、オペレーションが一元的に管理され、従来の煩雑な作業が効率化できることに企業側の意義があるという。

  一方、消費者側から見ると、オンライン上で接客をしてもらい、店舗で受け取るなどのシームレスな(継ぎ目のない)買物体験が享受できる。また、好みの色や柄をおすすめされるなど、パーソナライズ(個人向けに最適化すること)された体験が提供される。さらに即時に在庫情報がわかり、受け取り場所は複数の選択肢から選べ、問い合わせ履歴とその内容が一元的に管理されることで、自分に合ったサービスを受けられるという。

 従来は店舗中心だった商売が、ECが伸長し、2010年頃からオムニチャネルが登場、その進化系としてユニファイドコマースが注目されてきた。したがって、オムニチャネルにおける会員情報と在庫情報がすべての基盤になっている。

ChayTee/iStock

自動化の限界、人間の知見がカギに

 ユニファイドコマースでは「顧客体験」と「パーソナライズ」が同時に語られることが多い。パーソナライズについて望月氏は「消費者が受け取る情報は以前に比べて格段に増えているうえ、必要な情報しか受け取らなくなっている。パーソナライズによってSNSなど会社から個人に発信する情報が読みやすく受け取りやすくなるなど、現状ではコミュニケーションツールの最適化という成果が出ている。課題はAIがいくら進歩しても、人間であるマーケッターによるシナリオやキャンペーンの設計、高度なマーケティング判断が必要で、それなしにはうまくいかないことだ」と述べている。

 つまり、システムへの依存や数字に引っ張られることなく、マーケッターが業界や顧客を理解し、仮説とインサイト(消費者の隠れた心理)を持っていないと成果は出ないということだ。

 一方、顧客体験について望月氏は「今の若い人たちは買物がデジタル中心になっている。オンラインがメインで、オフラインは受け取り場所などサブとしての限定的な機能にとどまっている」と指摘する。若い消費者はネット上で商品を見て、意思決定してから店に行くことが買物行動のデフォルトになっているため、企業側もオンラインを中心に試着、接客から支払いまでの一連の買物プロセスを、よりスムーズに、人を介さず実現できるように変える必要があるという。

 顧客体験には、買物の煩わしさをなくすという方向のほかに、よりリッチな顧客体験を実現するという方向性がある。たとえばオフラインにおける優秀な販売員は、接客の声掛けから始まり、なぜ買物をしに来たのかを聞き、さまざまな商品や組み合わせのパターンを時間をかけて提示している。

 ユニファイドコマースではこうした一連の接客をオートマチックに行い、クーポンや商品提案などによって滞在時間やページ閲覧数を増やし、売上に貢献するという流れを構築できるという。

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