ディスカウントの本質、日本の激安スーパーのほとんどが「ディスカウント」ではない理由
世界経済の混乱を背景とした値上げラッシュ、各種コスト増が続くなか、「安さ」に強みを持つ食品小売が存在感を増している。近年は食品スーパー(SM)企業によるディスカウントフォーマットの展開も活発化しており、「安さ」を求める消費者をめぐる競争が激化している。本稿では、食品小売の「ディスカウント」の在り方について、日本リテイリングセンターの渥美六雄氏が解説する。
インフレ進行でディスカウントに注目
商品価値は「安さ」と「機能」の掛け算だ。「安さ」は商品価値の一部であり、常に不可欠である。消費者は安くなければ買わないし、買えない。価格が期待に反していれば消費者の選択肢にも挙がらないので、商品価値はゼロになってしまう。
ここ最近は値上げラッシュなどもあって日常の消費が広く話題となり、SMをはじめとするチェーンストアに消費者の関心が集まるにつれて、「日常の暮らしを支えるチェーンストアのビジネスにおいて、『安さ』は重視すべきポイントであり、存在意義でもある」とあらためて認識されるようになってきた。このことは、業界全体にとって非常にポジティブな風潮といえる。

物価高が家計をますます圧迫し、消費支出を抑えざるを得ない状況下、消費者の安さへの期待に応えるべくディスカウントフォーマットを積極的に展開しようとする動きは至極真っ当といえる。実際に、米国のウォルマート(Walmart)やドイツ出身のハード・ディスカウントストア(HDS)のアルディ(Aldi)は「われわれが安さでリーダーシップをとり、消費者の生活費を下げなければならない」と自覚し、インフレ下でも価格水準を徹底的に下げている。
一方、日本の食品小売の世界では、
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