土谷美津子・岡田尚也両氏に聞く!ビオセボンの成長戦略 Vol.2
岡田尚也氏インタビュー
3月1日、イオン(千葉県/岡田元也社長)傘下で、オーガニック専門店「ビオセボン」を運営するビオセボン・ジャポン(千葉県)の新社長に岡田元也氏の長男、岡田尚也氏が就任した。2月22日の「ビオセボン富ヶ谷店」(東京都渋谷区)のオープン日に、岡田尚也氏(当時、営業部長)に独占取材した。
オーガニックを日常的に楽しんでもらえる店づくり
──富ヶ谷店のオープンで9店舗目となります。どのような特徴がありますか。
岡田「ビオセボンは店舗に応じてコンセプト自体を大きく変えるということはありません。基本的にはオーガニックを日常的に楽しんでいただけるように、商品はオーガニックだけれども、ふだん使いの買物ができるようなお店をめざしています。そこはほかの店舗とは変わりません。
ただ、富ヶ谷店は地域がら、小さなお子さま連れのお客さまがたくさんいらっしゃいます。午前中もたくさん来店されました。近くにインターナショナルスクールもあります。また、単身やDINKS(共働きで子供のいない夫婦)の方でも、比較的感度の高い方、健康志向の強い方など、女性を中心にたくさんお住まいのエリアです。
このあたりは麻布十番(16年12月オープン)がオープンしたばかりで、ビオセボンが国内にまだ1店舗しかない頃からお客さまから出店してほしいという声が高かった場所です。実はこの店舗を出店することになったきっかけもお客さまとのコミュニケーションでした。」
生産者との協働で実現した国産のオーガニックビーフ
──富ヶ谷店の目玉商品は何でしょうか。
岡田「オーガニックビーフです。やはりオーガニックのコンセプトストアとしては、お肉もオーガニックの商品を品揃えしたいと思っていました。しかし、日本にはなかなかそういった生産者も少なく、価格も日常購入には難しいという状況でした。
そのなかで、有機JAS認証のついた国産牛肉を販売できるというのは大きな意味があると思っています。もちろんわれわれも『トップバリュ』のタスマニアビーフなどを品揃えしていますが、『国産牛がほしい』という声を何度ももらっていました。その意味で今回、お客さまのニーズに応えられたのでうれしく思います。」
──有機JAS認証を取得する生産者はこれから増えてきていますか。
岡田「これまでオーガニックの認証は取っていないけれども、無農薬など“有機的な製法”でずっと生産されている方々がいます。そういった生産者の方に、有機JASの認証をとっていただき、オーガニックの商品として販売していただく、という取り組みを増やしていきたいと思っています。
われわれがビオセボンの店舗を増やし、お客さまにより日常でご利用いただけるようになるには、生産者サイドとの協働がすごく大事だと思っています。その一環として、オーガニックビーフは目玉商品になると思います。」
──今回は冷凍のみですが、いずれはチルドで販売することもありますか。
岡田「そうですね。率直に言いますと、日本のお客さまはお肉をチルドで購入するという習慣があります。海外では冷凍で買うのも当たり前になっていますが、必ずしも日本はそうではありません。チルド化が進むと、より幅広いお客さまに試していただけるようになると思っています。」
3月で10店舗体制に じわじわ売上を伸ばす
──ふだんの店舗と比べると商品構成はいかがですか。
岡田「大きく変えていません。たとえば東武池袋店のように小型店舗であれば商品を絞り込みますが、基本的にはわれわれが持っている商品ラインアップを中心に品揃えしています。標準化と個店のよさのバランスをとっていきたいと思っています。」
──3月に10店舗目もオープンする計画です。立て続けに出店されていますが、現状、業績はいかがでしょうか。
岡田「決して簡単な事業ではない、と私も含め社員一同自覚しています。麻布十番店以外はまだ開店1年未満の若い店ですが、麻布十番店は3年目となります。
麻布十番店は3年目、非常にいいスタートを切っています。売上高は1月が対前期比108%、2月は110%近くまで上がっています。右肩上がりです。
私は、好調理由は2つあると思っています。品揃えが増えて、お客さまが買物しやすくなっている、というのが1つ。もう1つは、認知度が上がってきているためだと思います。外観で何を売っているのかよくわからない、入りづらい、という声も聞きます。そういったものが徐々に解消されているのかな、と思います。オープン時に買いに来られたお客さまがまた戻ってきている(=リピート客になる)、というデータもあります。それが数字の底上げにもつながっています。」
──今期も出店は続けられますか。
岡田「今年度、来年度は重要なタイミングだと思っています。1つずつ積み重ねていって、お客さまが買いやすい店舗にしていきたいと思っています。」
──1年目よりも、2年目、3年目で認知度を高めながら、売上を伸ばしていくというイメージですか。
岡田「そうですね。小型店は全般的にそういう傾向があると思います。たとえば、チラシで集客してもそれは一過性で終わってしまいます。認知度が高まってくるとお客さまもついてきます。ビオセボンでは、1年目の後半から数字が上がってきて、2年目さらに伸びる、というパターンが多いです。」
──リピーターの獲得が重要になりますね。
岡田「はい。遠方からの観光客をどれだけ取り込んでも、地元の近くにお住まいの方にご利用いただけないと、お店としては価値をなかなか出せないと思っています。地域のお客さまから愛されるお店にならないといけないと思っています。」
──そのためには、商品とサービスが重要になります。
岡田「商品に関しては、通常のスーパーと違って、商品があふれかえっているわけではありません。この商品が売れないからといって、ほかの商品と入れ替えるということもなかなかできません。ですから、この商品をどうやったら売れるようになるか、について生産と販売で取り組むことになります。
サービスについては、ビオセボンに来たらとても感じがよかったと言っていただけるようなフレンドリーな接客、話しかける接客、を重視しています。
皆さんほかの小売業も『接客だ』と言います。しかし、ほかの方々が言う接客とは少し違うと思っています。もう少しお客さまに飛び込んでいく接客です。
端的な例を出すと、商品をお客さまがじっと見ているシーンがよくあります。ビオセボンでは、最後購入していただくためのお声がけを、こちら側からするのです。つまり、お客さまに飛び込んでいくことが求められています。
麻布十番店は3年目に入り、スタッフも熟練してきています。どんどん飛び込んでいきます。100人のお客さまが100人それを喜ぶわけではないと思いますが、待っているのではなく、自分から行くことを重視しています。」
人手不足に悩んだことはない。募集人数の数倍が応募!
──近年、小売業は人手不足で悩まされていますが、貴社はいかがですか。
岡田「おかげ様で、採用で今まで苦労したことがありません。逆に、新店を出店しますと、かなりの数の応募スタッフのお断りをさせていただいています。募集人数の数倍の応募があることもあります。
ありがたいことに、普通の物販・小売業とは少し違うことをしたいというニーズもあれば、接客が好き、自然食品が好き、などスタッフにはいろいろな動機があります。」
──人手に困っていない小売業はなかなかないですよね。
岡田「あと、定着率もいいと思います。都心の店舗は、職があふれているため、定着率が低いと言われます。選択肢がたくさんあるなか、スタッフに楽しく働いてもらう、ということを重視しています。
その結果、麻布十番店は3年目に入りますが、7割は開店時からのスタッフです。学生で卒業、なども含めてです。
繰り返しになりますが、一つひとつの積み重ねが大事だと思っています。ビオセボンはこれからも、地域のお客さまに愛されるようなお店をめざしていきます。」