ファストリ、縫製技術のトレーニング実施でロヒンギャ難民女性の自立を支援へ
ファーストリテイリング(山口県/柳井正会長兼社長)は2022年11月9日、国連難民高等弁務官事務所(以下、UNHCR)と連携し、バングラデシュに避難中のロヒンギャ難民に対する自立支援プロジェクトを開始することを発表した。
2025年までに1000人の難民女性にトレーニング
ミャンマー西部に暮らすイスラム系少数民族ロヒンギャが、軍の迫害を逃れるため隣国のバングラデシュに一斉に避難した「ロヒンギャ危機」があったのが2017年のこと。そこから5年が経過した現在も、難民がミャンマーへ帰還する見通しは立っておらず、UNHCRの統計によれば、2022年9月末時点で約94万人がバングラデシュ南東部のコックスバザールで避難生活を送っている。
難民支援をサステナビリティ活動の柱の1つに据えるファーストリテイリングでは、2006年からUNHCRと連携し、世界中の難民に衣料支援を行ってきた。11年にはアジア企業として初めてUNHCRとグローバルパートナーシップを締結。難民の自立支援や雇用、万民問題の啓発活動に取り組んできた経緯がある。
ファーストリテイリングが今回立ち上げたプロジェクトは、ロヒンギャ難民の女性の自立を支援することを目的としている。具体的には、25年までにロヒンギャ難民女性約1000人に対し、生理用の布ナプキンを縫製するスキルを習得するためのトレーニングを実施する。
生理用品の縫製技術を伝授
ロヒンギャ難民キャンプでは現在、慢性的な物資不足が課題となっている。難民キャンプでは、避難先に向かう途上で武力衝突や暴力などに遭い、男性家族を亡くしたというケースが多く、全世帯の3割が女性1人で生計を立てているという。そうした状況下、女性にとって不可欠な生理用品の生産技術を習得させることで、自立を支援するというわけだ。
同プロジェクトは2022年9月からスタートしており、第1段階では23年3月までに250人の女性を対象にトレーニングを実施し、77万点の生理用品を生産するとしている。ちなみに、プロジェクトは有償ボランティアというかたちを取っているため、トレーニングを受ける難民女性はナプキンの生産を通じて報酬を得ることができる。
同プロジェクトの実施にあたり、ファーストリテイリングでは、初年度に80万ドル(約1億15000万円)を拠出しており、これを難民の報酬や縫製に必要なミシンや布に充てるとしている。
記者会見に臨んだ柳井会長は「われわれ日本人は、異文化の人々と生活、あるいは仕事をする経験があまりにも少なく、グローバル化した世界に対応できていないのが現実だ。そうした意味でもこのような支援は必要だ」と話した。