1人に現場の権力が集中し、濫用が見られる場合、どう対処すべきか!?
一人に依存しない 外部から管理職人材を登用すべき
患者の死の理由を私は詳細には把握できていない。医師と看護師が当日、早急に駆け付けたとして、助けることができたかどうかはわからない。それでも、深刻な問題ではある。私は、次のような教訓を導いた。
こうすればよかった①
相手が誰であろうと公平に厳罰を持って処すべき
看護部長だけの責任にすることは無理があるのかもしれないが、看護師を束ねる立場でありながら、今回のような問題は致命的といえよう。理事長は本人に事実関係の確認のうえ、適切な処分をするべきだった。状況いかんでは、退職してもらうことも必要ではなかっただろうか。
処分は、本人に対してだけなくなく、ほかの看護師や事務スタッフ、そして医師らにも「こんないい加減なことは許さないぞ」といったメッセージとして伝わる。優柔不断な姿勢は必ず、マイナスのイメージを与える。意識の高い医師や看護師、事務スタッフらが失望し、退職する場合があるのかもしれない。毅然たる姿勢が必要なのだ。
こうすればよかった②
ひとりに依存する態勢は絶対につくるべきではない
看護部長が必要以上に力を握るのは好ましくない。いじめが事実であるのかはわからないが、退職者が多いことは間違いない。このことが、部長に様々なものが集中する態勢をつくる大きな理由となっている。
これまでのいきさつを見ると、部長が部下を育成しようとする意志が希薄で、自分の身をおびやかされることを警戒している可能性が高いのではないか。ここを起点に考えると、新しい部長を外部からハンティングし、新体制にするべきではないだろうか。そうしないと、同じようなことが続く可能性がある。理事長らは心を鬼にして、部長に退職を迫ることを検討したほうがいい、と私は考える。
最後に…。今回の一見は、患者の家族からは弁護士を通じて抗議があったという。その後の結末はわからずじまいだったが、はっきりと言えるのは、人の命を預かる職場としては極めて軽率な行為であったことだ。ひとりに依存する態勢の危うさについて、あらためて考えるべきではないだろうか。
神南文弥 (じんなん ぶんや)
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。
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