【再掲】ZOZO礼賛の後に手のひら返しした人に読んで欲しい、ZOZOの戦略の本質と評価
ZOZOの戦略を正しく評価する
ZOZOは、その後、取得・保管したデータを各NBブランドに開放し、サイズデータのプラットフォーマーになるといった「三方良し」の戦略を発表したが、その戦略は私は正しいと思う。
もともと「ものづくり」というのは、そんなに単純なものではない。そもそも小売業が、しかも、まだ世界のどこもやれていないようなスマートファクトリーを活用し、パーソナルオーダーを行うというのは、それほど簡単に実現できるものではない。ものづくりに精通したメーカーか商社などとしっかり取り組み、強固なビジネスモデル設計をする必要がある。これは製造ノウハウがある製造小売業にとってもハードルは高い。だから、ものづくりの手前のサイズデータを囲い込むというのは非常に意味があるわけだ。これを公式化すると、
高い商品開発力 × SUITのようなハイテクツール × 製販連携したビジネスモデル(マス/カスタマイゼーション)、となる。
この3つは切っても切り離せない関係にあり、どれか1つだけで成功するということはない。ZOZOSUITは、さらに熟成をかさねてゆけば本物の世界制覇の道具になりえたかもしれないが、それを潰した「外野」の責任は大きいと思う。
ZOZOARIGATOも、空前の失敗という烙印を押されたまま、5月30日をもって終了した。しかし私は、この戦略についても、批判ばかりが目立っているが一理あると思っている。
前澤社長は、「リアル店舗はあの手この手でディスカウントを行っている。なぜECはできないのか」と疑問を呈しているが、私もその通りだと思う。例えば、ポイントは、勘定科目でいえば販管費になるが、消費者側から見れば値引きであることに変わりない。実際に販売価格を下げるためには、定価で売る期間などの法的制約を受けるが、販促費の名を借りれば実質的に変則的な「値引き」が可能なのだ。なぜ「ポイント」還元であればCRMプログラムで、売価変更だと値引きになるのか。前者は出品するメーカー側に許容されて後者は許されないのだが、結局は両方同じことだ。ZOZOは、クレジットカード事業に参入し、「ZOZOCARD」を持った人は5%のポイント還元を打ち出したが、なぜか周りはうんともスンともいわない。消費者にとってみれば、カードだろうがポイントだろうが、メンバーシップだろうが、とにかく安く買えればよいだけで、ZOZOARIGATOと何が違うのかということである。
メーカーにポイント還元分を負担させる小売業も多いなか、ZOZOARIGATOのようにZOZO自身が自らディスカウント料を負担するというのは、「三方良し」のフェアなやり方だと私は感じた。
ZOZOだけが儲かる構造になっていたということに加え、高級車を乗り回し、
このように、古くは、東京スタイルと村上ファンド、また、ホリエモンのテレビ局買収やスティールパートナーズのブルドックソースのように、我々は「目立つ杭」を打つ悪い癖がある。結果、外国の有能な人材はJapan passing (日本を素通り)し始めている。「沈黙は美徳」、「空気を読む」といった日本独特の価値観を押し付けがちな日本人。ZOZOのような企業がもっと日本にでてこないと、本当に日本のアパレル産業は危機的状況に陥るのではないか。
私は本当にZOZOのような企業を応援したい。そして、また、ZOZOSUITのような、奇抜なアイデアを世に問うて欲しい。そして、我々は「評論家」でなく、「当事者」として、自分自身が感じ、自分で判断できる力を持ち、同社のようなチャレンジャー企業を見守り、応援してゆくべきだと思う。
プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)