事業環境激変を乗り切る!小売業、3つのDX新潮流とは?
収益性を確保できず、破たんするDX企業も
最後に「DXビジネスモデルにおける収益性確保の重要性」について見ていく。23年12月、衝撃のニュースが世界を揺らした。韓国EC最大手のクーパン(Coupan)がラグジュアリーEC大手の英ファーフェッチ(Farfetch)を約700億円で救済買収するというニュースだ。
ファーフェッチはラグジュアリー業界のデジタル化とEC化を促進し、そのビジネスモデルはDXの旗手としてビジネススクールのケーススタディーに取り上げられるほどの有名企業だ。18年にはニューヨーク証券取引所に上場し、時価総額は一時期1兆5000億円を超えていた。しかしながら、収益は安定せず上場後も赤字が継続。資金繰りの懸念と格付けの引き下げによって足元の株価は最高値から100分の1の水準に落ち込み、時価総額は300億円を割っている。
そんなファーフェッチのケースから見えてくるのは、DXにおけるビジネスモデルの重要性である。数年前スタートアップ市場が過熱化していたころ、DXを標ぼうする企業には、投資家から簡単に資金が集まる時期があった。目先の収益性を度外視してもテクノロジーへの投資を継続し、赤字続きでも“企業価値”を上げ続けることで会社は成長していく。ファーフェッチはまさにそのような企業の代表格だった。
しかしながら、ファーフェッチや昨年破たんしたオフィス・スペースレンタル大手のウィワーク(WeWork)のケースのように、そもそものビジネスモデルが収益性を確保できるものでない場合、中長期的には会社組織として持続可能ではないということを肝に銘じなければいけない。ファーフェッチのケースは、DXビジネスモデルの重要性を再確認させられたよい事例といえよう。テクノロジー投資も重要だが、そもそもビジネスモデルとして収益性があるのか、利益拡大ができるのか。DXというワードに惑わされず見極めることが肝要である。
さて、ここまで23年をDX視点で振り返ってきたが、24年はどのような年になるだろう。事業環境変化のスピードはますます高まりDXの重要性は増している。本特集で取り上げた各企業のケーススタディーが、本質的なDXにチャレンジするための示唆を与えてくれるだろう。
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