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ファミマ、好調リテールメディアのさらなる拡大に向け新サービスを開始!

リテールメディアの先行企業の1つとして知られるファミリーマート(東京都/細見研介社長)。自社の決済機能付きスマホアプリ「ファミペイ」の利用拡大や、店頭へのデジタルサイネージの設置など同社はこれまでさまざまな施策でリテールメディア事業を拡大してきた。2024年もリテールメディア事業のさらなる拡大へ、新たな施策を展開。リテールメディアでファミリーマートと顧客の接点を強化し、より多くの顧客獲得をめざす。
注:本文内は「ファミペイ」「Famipay」の2通りの表記があるが、前者はスマホアプリ「ファミペイ」、後者は決済サービスの「Famipay」を指す

顧客とのデジタル接点を強化!

(左から)データ・ワンの判治秀丈CRO、ファミリーマートの国立冬樹デジタル事業部長、細見研介社長、ゲート・ワンの速水大剛COO、ファミマデジタルワンの中野和浩社長

 「日本ではファミマがリテールメディアの時代を切り開いた。われわれは非常に自負を持っている」。7月に開かれたデジタル戦略説明会で、細見社長はそう手ごたえを語った。

 ファミリーマートは、デジタルにおける顧客接点を強化しようと、ファミペイやデジタルサイネージ「FamilyMartVision(ファミリーマートビジョン)」など複数の施策を展開する「カスタマーリンクプラットフォーム」の構築を推進してきた。リアル店舗だけではなくデジタルでも顧客とつながり、関係性の深化を図るねらいだ。

 事業の進捗は順調で、ファミペイのダウンロード数は1年で約30%も増加し、20244月には2000万ダウンロードを突破した。ファミリーマートビジョンについては1万店舗超への設置が完了。ファミリーマートビジョンでは商品の販促目的の広告配信だけではなく、自治体や企業など多様な取引先からの広告出稿が伸びており、2024年度(252月期)の取引先数は対前年比70%増の約250社に達する見込みだという。

 ファミリーマートはリテールメディア事業に本格的に推し進めるため、20年以降、事業会社3社を設立している。その3社は、ファミペイや金融事業を担うファミマデジタルワン(東京都/中野和浩社長)、親会社の伊藤忠商事(東京都/石井敬太社長)とともに立ち上げた広告配信・代理店事業のデータ・ワン(東京都/太田英利社長)、デジタルサイネージ設置や広告メニュー拡充などのメディア開発事業のゲート・ワン(東京都/藏田一郎社長)だ。3社はいずれも昨年度に営業黒字を達成しており、細見社長は「構想が軌道に乗ったと自信を深めている」と話す。

アプリ内に「メーカー専用」ページ

アプリ「ファミペイ」に新たに立ち上がったメーカー専用ページ。画像は日本コカ・コーラのページ

 リテールメディア事業を加速させるため、ファミリーマートは7月、新たな施策を発表した。その1つが、ファミペイの中に立ち上げる「ファン育成ミニアプリ」だ。メーカーにファミペイのサービスや機能を開放し、ファミペイ上のミニアプリ(アプリ上で動作するアプリ)で各メーカーが自由に専用ページで個別に広告やゲーム、情報発信ができるようにする。クイズやアンケートなどを通じて顧客理解を深めるほか、利用頻度が高い顧客には優良会員特典など特別なプログラムも用意。ミニアプリ内で配信する広告などの内容はメーカー側が作成する。アプリを通じてファミリーマートでの買物を楽しんでもらったり、顧客のニーズに沿ったクーポンを配信することで来店増加につなげ、ブランドファン、ひいてはファミリーマートのファンを育成したい考えだ。

 また、これまではアプリの利用者に大まかなセグメント単位でクーポン配信などを行っていたが、メーカーには顧客の購買行動などを反映したより細かいセグメントで情報配信をしたいというニーズがある。それを可能にするため、専用ページを使って購買データの分析や販促効果の検証などを行い、メーカー側とデータの連携なども進める予定だ。ファミマはこの取り組みを、ブランドファンを育成する「デジタルパートナーシッププログラム」と位置づけ、パートナーとしてすでに日本コカ・コーラ(東京都/ムラット・オズゲル社長)やサントリー(東京都/新浪剛史社長)など3社の参加が決定しているという。86日には、ファミペイ上に日本コカ・コーラのページが立ち上がった。

 ファミリーマートでデジタル事業本部デジタル事業部長を務める国立冬樹氏は「小売業界では日本初の取り組みになると考えている。われわれもメーカー側と一体になってより顧客を知り、便利で楽しいお得な買物をしていただけるように、デジタルを活用しながらリアル店舗もアップデートしていきたい」と語った。

 そのほか、ファミペイアプリでは7月から新サービスとして「ファミマメンバーズプログラム」が始まっている。来店回数・購入金額に応じて4段階の会員ランクに振り分けられ、会員ランクごとに特典が付与される仕組みだ。72日のプログラム開始後、新規のアプリ会員はこれまでの5倍超の速さで増加しているという。

 今後はアプリと実店舗を連動させる取り組みも行う。約14800店に設置するビーコンを使い、ファミペイのユーザーが来店するとクーポンや広告をプッシュ通知する。

 

ファミリーマートビジョンの役割が変化!

 ファミリーマートビジョンの設置も拡大していく考えだ。ファミリーマートビジョンは通常、各店舗のレジ上に設置され、商品の広告などが配信されている。現在は全国の約1万店舗に設置し、1週間で約6400万人へのリーチが可能となっている。今後は大都市圏を中心にさらに2000店舗に追加設置し、約7700万人へリーチ数を拡大する計画だ。

 設置店舗数を増やす中で、ファミリーマートビジョンの役割も変化しつつある。足元では商品の販促にとどまらず、メディアとしての可能性を広げており、地方テレビの番組と共同で商品開発を行い、番組とファミリーマートビジョンで開発過程をまとめた動画を流して双方への送客を実現。ほかにも、30の都道府県と連携し、各地域ごとに内容を変えた熱中症対策の啓発動画をファミリーマートビジョンで流した。ゲート・ワン代表取締役COOの速水大剛氏は今後の展開について「リーチを強化しつつ、外部のメディアや自治体との取り組みなど横連携を通じてリテールメディアとしての可能性を広げたい」と話した。

店頭に設置されているデジタルサイネージ「FamilyMartVision」(ファミリーマート提供)

「Famipay」、リアルカードも発行へ

 ファミリーマートが推し進めるカスタマーリンクプラットフォームには、金融サービスも含まれる。今回の戦略説明会では、新たな施策として、来年の春にファミペイの決済サービス「Famipay」のリアルカードを発行することを発表している。Famipayはファミリーマートの店舗での決済が中心で、利用場所が限られていたが、リアルカードはガソリンスタンドや鉄道改札のほか、JCBの加盟店など国内外の約4900万店で使えるという。リアルカードの発行によって、Famipayの外部利用を促進するねらいだ。

 顧客接点を強めるべく、リテールメディア事業において新たな施策を打ち出したファミリーマート。同社は、リテールメディア事業の営業利益を3年後(272月期)に50億円、5年後(292月期)に100億円とする目標を237月に掲げている。この進捗状況について、細見社長は「勢いからいうと5合目くらいの感触を持っている」と手ごたえを語る。一方でコンビニを取り巻く経営環境については「17年ぶりにゼロ金利が解除され、これからインフレが本番になると考えている」との危機感も示す。「金利のある世界でさらに成長していくには、お客さまとより強力に“コンビになる”ことが必要不可欠だ」としてカスタマーリンクプラットフォームの構築をさらに進めていくとした。