現地レポート 日本初!楽天と西友が公道走行の自動配送ロボットによる商品配達を開始
UGVの役割が高まりつつある理由
楽天、西友、横須賀市の3者は2019年から、横須賀市が推進する「ヨコスカ×スマートモビリティ・チャレンジ」の一環として、一般消費者向けの配送サービスの実験を開始。「横須賀は山や坂が多く、高齢化も進んでおり、日常生活に不便や不安を覚える方も多い。新しいテクノロジーを活用し生活を維持向上させていく必要がある」(横須賀市の上地克明市長)という課題を共有し、それを解決するための施策を共同で展開してきた。
まず19年7月から約3カ月にわたり、横須賀市内の「西友リヴィンよこすか店」を拠点に、年間約20万人が訪れる横須賀沖の猿島に向けてドローンを使った商品配送サービスを開始。バーベキューや海水浴などで多くの人々が島を訪れる時期に、生鮮品を含む食品や飲料、救急用品など約400品目を配送した。さらに同年9~10月にかけては、同じくリヴィン横須賀店を拠点に、同店に隣接する港湾緑地「うみかぜ公園」でUGVを用いた商品配送サービスも行っている。
3者の取り組みとしては3つめにあたる今回の配送サービスだが、「自動配送ロボットが公道を走行して顧客宅まで商品を配送する」という事実はやはり特筆すべき点だろう。もちろん、国土交通省による「自動配送ロボットの基準緩和認定制度」と、道路使用許可を得たうえで実現した期間限定の取り組みであり、すぐに全国各地で拡大できるものではない。しかし、実際に公道を使った商品配送サービスを日本で初めて稼働させることで得られるデータや知見は、大きな価値を持つことは間違いないだろう。楽天の執行役員ロジスティクス事業ヴァイスプレジデントの小森紀昭氏は、「ラストワンマイル配送については、UGVとドローンを次世代技術のコアとして考えている。今回のサービスを通じて安全性を認知していただき、『UGVがすぐそばにある生活』を早くお届けしたい」と力を込めた。
また、コロナ禍での買物行動の変化に対応したツールとしても、UGVの注目度は高まりを見せつつある。西友の店舗運営本部バイス・プレジデントの小川秀展氏は、「昨年から”密”を避けた買物に対するニーズが高まっており、ネットスーパーの売上が急増している。今回のUGVの配送サービスには、買物ニーズが多様化するなかで大きな期待を寄せている」と話した。
物流領域での人手不足、少子高齢化や過疎化による買物難民の増加、そしてコロナ禍での買物に対するニーズの変化――。社会に山積するこうした課題を解決するうえで、UGVの担う役割は大きい。しかし法規制の問題や、安全と効率を両立したオペレーションの策定など、導入拡大に向けてはハードルも多く存在する。今回の取り組みも実験の域を出ない面はあるが、楽天と西友が国内の無人配送の領域では一歩抜きんでた存在となることは間違いないだろう。