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AI投資で関心の高い6領域は?生成AI、小売業の期待と課題

望月 智之 (株式会社いつも 取締役副社長)
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小売業における生成AIの課題

 一方、同アンケートでは生成AI活用においての課題も浮き彫りになっており、とくに「生成AIが出力する文章やデータから、どのように顧客インサイトやマーケットインサイトを得るべきかがわからない」という声が約70%にのぼりました。

(出典:AI Will Transform Retail — But Success Hinges On Tech, Data, And Process)

 インサイト(購買行動の根拠や動機・潜在的な欲求)を得るためには、まずAIに学習させるためのデータが必要ですが、小売業界では有用なデータを収集・蓄積する体制が整っていないケースが多く、これがAI活用を阻む要因となっています。

 また、社内におけるAIソリューションの教育や担当者の育成に課題を感じる企業も多く、テクノロジーの進化が著しい中で、常に新しい技術に対応することが難しい点も指摘されています。

  また生成AI活用の注意点として、何でもAIを使えば良いという訳ではなく、AIとの親和性が高い企業や業種が存在します。それを見極めた上で、社内でできる限り紙媒体ではなくデジタル化されたデータを蓄積し、そのデータを整理してAIに学習させる体制を整えることが重要です。

 たとえば、建設業では図面が手書きであることが多く、小売業ではアンケートが手書きのままであることも多々あります。これらの問題を解決し、デジタル化されたデータを保有することがAI活用の第一歩です。

  さらに、データの問題をクリアし、生成AIを使って画像や文章を生成できても、店舗スタッフの日常業務にはなじまないケースも多いのが現状です。

 たとえば、接客時にタブレットを持ちながら業務を行うといった形式は、既存のオペレーションに慣れた従業員には難しく感じられるでしょう。AIやシステムを日常の業務に組み込んで融合させることは容易ではありません。

 一方、ECサイトではパソコンを使ってデジタル化されたデータを処理することが多いため、AIが馴染みやすい環境といえます。

  また、業種によってはChatGPTGeminiなどの汎用AIが期待した成果を上げられず、不正確な結果を返すこともあります。そのような結果になる理由の1つとして、データ以外に業種に特化したルールやアルゴリズムをAIに学習させられていない点が挙げられます。

 実際に生成AIが流行して以降、業務に適合せず利用を控える企業も多く存在します。AIを効果的に活用するためには、業界ごとのルールやノウハウを学習させ、それを参照しながら運用することが不可欠なのです。

  以上、生成AIへの期待と課題をお伝えしました。次回の記事では生成AIを活用するための7つの具体的をご紹介し掘り下げます。

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記事執筆者

望月 智之 / 株式会社いつも 取締役副社長
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。

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