東武鉄道と日立製作所がタッグ! 指静脈を用いた生体認証サービス「SAKULaLa」の成果
2024年に政府目標のキャッシュレス比率4割を達成するなど、日本国内ではキャッシュレス化の波が着実に広がっている。そうしたなか、クレジットカード、電子マネー、二次元バーコード決済に続く、新たな決済サービスも拡大の兆しを見せている。その一例が、東武鉄道(東京都/都筑豊社長)と日立製作所(東京都/德永俊昭社長)が共同で展開する生体認証サービス「SAKULaLa(サクララ)」だ。「東武ストア」への指静脈を用いた先行導入から約1年、社会インフラとして全国展開をめざす同サービスではどのような成果が見られているのだろうか。
日立製作所が開発し、東武鉄道が導入進める
血管のパターンは個々人で固有性が高く、かつ不変である。指や手のひらなどの静脈パターンを使って本人確認を行う「静脈認証」は、その判別精度の高さから、複数の企業によって長年研究されてきた。しかし、技術の実装は銀行をはじめとした金融業などに留まり、小売業での活用例は国内ではほとんどなかった。
そんな中、指静脈認証サービスの社会実装を進めてきたのが東武鉄道と日立製作所だ。端末の開発と提供を日立製作所が行い、顧客体験の設計と施設・店舗への導入を東武鉄道が担うかたちで22年から協業を開始。23年8月には生体認証サービスの基盤となる「デジタルアイデンティティ(電子化された個人情報)」の共通プラットフォームを発表した。
その後、24年4月に「東武ストア越谷店」(埼玉県越谷市)、「東武ストアみずほ台店」(埼玉県富士見市)、同年5月に「東武ストア新河岸店」(埼玉県川越市)で指静脈認証サービスに対応したセルフレジを先行導入。24年9月には先述の共通プラットフォームを「SAKULaLa」と名付け、本格展開した。
静脈認証の導入で決済時間を50%短縮
「SAKULaLa」は、指の静脈パターンを読み取ることで、事前に登録された個人情報にワンストップでアクセスできるプラットフォームだ。
利用者は氏名、住所、クレジットカードなどの情報を専用サイトに登録する。その後、定期券売場などに設置された登録カウンターで指静脈パターンに紐づける。情報の連携が済めば、レジ横の読み取り装置に指をかざすだけで本人確認、決済、ポイント獲得・利用などが可能となる仕組みだ。
指静脈認証による決済は、財布やスマートフォンを取り出す動作が不要なため、一般的なクレジットカードによる決済と比較して、決済時間を約50%短縮できる。また、指静脈認証を通じて年齢の確認ができるため、たとえば酒類も完全セルフで購入できる。店舗側にとっても年齢確認のための人員・時間を割く必要がなくなるなど、メリットは大きい。

さらに、「SAKULaLa」はPOSシステムの改修を行うことなく、専用のタブレットと認証装置を設置するだけで利用を開始できる。省スペース、短時間で実装可能であるため、小規模な小売店や飲食店でも、導入ハードルは低い。