注目のキーワード
  • x
  • facebook
  • rss

小売業をより進化させる!生成AI活用7つの領域とは

望月 智之 (株式会社いつも 取締役副社長)
Pocket

生成AI活用⑥バーチャル試着室の活用

 すでに一部の店舗やECサイトでは、生成AIを活用したバーチャル試着室が導入され始めています。

 従来、フィッティングを行うためには実際に店舗に行き、試着室で着替える必要がありましたが、店舗が混み合っていたり、忙しい週末などにその時間を確保できず、購入機会を逃してしまうことがありました。このような課題に対して、「購入したいけれど、サイズや自分に似合うかどうかが気になる」という顧客に向けた、バーチャル試着室が解決策として注目されています。

 バーチャル試着室の具体例としては、2Dアバターや自身の写真を使用して、仮想的に服を着せ替えるものが一般的です。たとえば、自分の写真をアップロードし、Tシャツやアクセサリーを試したり、メイクアップやヘアスタイルのバーチャルシミュレーションも可能です。これにより、どのようなメイクやヘアスタイルが似合うかを、実店舗に行かずに確認することが可能です。 

 バーチャル試着室のメリットとしては、顧客が「今すぐ欲しい」と感じた商品を、すぐに確認できることで購入する意思が高まるため、購買率の向上が見込めます。また、実際に試着を行うことで、サイズやデザインが確認でき、返品率が低下するという効果も期待されています。

生成AI活用⑦店舗レイアウトの最適化

 生成AI活用の最後は「店舗レイアウトの最適化」です。小売業では、棚割りをシーズンごとに変更する店舗が多いのですが、レイアウトの最適化は商品部や各店舗の判断に依存することが一般的でした。しかし、AIを活用すれば自動で最適化することが可能になると、大きな期待が寄せられています。

 具体的には、POSシステムで把握している売れ筋商品に加え、店舗内に来店した顧客が手に取った商品や、隣の商品との比較を通じて購入を決定した過程、さらに他の商品とどのように組み合わせて購入したかを、店舗内カメラを用いて学習することができます。これにより、どの商品を近い位置に配置するか、どの売場を入口近くやレジ横に置くべきかといった、店舗レイアウトや導線をデータに基づいて自動的に設計することができるようになります。

 これまで属人的だった店舗レイアウトの決定が、データ学習を通じて自動化されることで、商品の補充や陳列、アルバイトの配置といった業務も最適化され、どのタイミングで作業を行うかまで自動的に組み立てられるようになります。

 店舗レイアウトは売上に対してとくに大きな影響を与える要素ですが、商品のマーチャンダイジング(MD)や、どの商品を仕入れて並べるかなど、重要性が高い分野でありながらこれまでデジタル化が進んでいませんでした。しかし、画像や動画認識技術の発展により、この障壁が取り除かれつつあります。

まとめ

 『生成AIの活用』と聞くと、単純な文章や画像の生成などに注目が集まりがちですが、環境を整えてデータを学習させることで、従来の小売マーケティングに変革を起こし、オペレーションコストやリソースの大幅な削減を可能にするなど、これまで実現できなかったような施策が可能となります。

 ほかにも、幅広いターゲットに向けたパーソナライズ接客や広告展開すら自動で実現してしまうのが、生成AIに寄せられている大きな期待とインパクトなのです。これだけ大きな変化が起こるAIの導入が遅れると、ライバルとの差はあっという間に開いてしまう可能性もあるため、しっかりと熟慮して準備を進める必要があるでしょう。

+2
1 2 3 4

記事執筆者

望月 智之 / 株式会社いつも 取締役副社長
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2025 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態