[ソウル 1日 ロイター] – 韓国の半導体メーカーは、日本が輸出管理を強化した品目について代わりの調達先を探す動きが行き詰まりつつあり、向こう数カ月で事業に多大な混乱が生じる可能性が高まっている。
日本政府は現在、半導体材料の「フッ化水素」「フッ化ポリイミド」「フォトレジスト」という3品目について、韓国向けに輸出する場合は個別の取引ごとに許可するかどうか判断している。そして韓国の複数の業界関係者によると、この措置が実施された7月上旬以降、1件も許可されていない。
ある韓国の大手半導体メーカー幹部はロイターに「日本はじわじわとわれわれの首を絞めつけている」と話した。
メーカー側は日本のサプライヤーが中国もしくは台湾に保有する工場から、直接に仕入れるなどの対応策を検討しているものの、今週初めに韓国の半導体業界団体がサムスン電子やSKハイニックスといった加盟社に渡した政府の手引書には、そうした仕入れが難しいと警告する内容が記されている。
ロイターが確認した指針によると、日本企業には対象品目を第三国から出荷するのを拒否する権利があり、日本の規制をすり抜ける行為をすれば半導体メーカーとサプライヤーの双方がより広範な国際的な通商制裁を科される恐れが出てくる。韓国戦略物資管理院のある高官は「簡単に言えば、日本から材料を輸入する努力はするなということだ」と述べた。
代替には限界
日本以外のサプライヤーを見つける取り組みも難航している。
ロシアと中国のサプライヤーからは出荷の申し出があったものの、半導体メーカーの話では、ほとんどの用途では日本の純度の高いフッ化水素が必要になる。高純度だからこそサムスン電子やSKハイニックスが世界市場の半分を超えるシェアを持つメモリーチップの不良率が下がり、メーカーが収益性を確保できるからだ。
また別の韓国の大手半導体メーカーの幹部は「日本の代わりに他国からの材料を使いたいとしても、われわれの現在の製造システムとパフォーマンスにとってふさわしいと証明するまでに数カ月かかる」と指摘した。
サムスン電子は7月31日の第2・四半期決算発表時に、日本の輸出規制によって事業環境の先行きが不透明になっていると説明。投資家向け広報責任者は「日本政府が最近打ち出した措置で材料の輸出が禁止されたわけではないが、新たな出荷承認手続きの負担とこの手続きがもたらす不確実性に起因する困難に直面しているので、視界は不良だ」と語った。
フォトレジストの輸出管理厳格化が適用されるのは、EUVリソグラフィと呼ばれる最先端技術に基づく半導体生産を行う企業に限られている。
ただサムスン電子はこの技術を使ってファウンドリー(半導体受託製造)の分野で台湾積体電路製造(TSMC)<2330.TW>に追い付こうとしていただけに、そうした動きに水を差されかねない。
ケープ・インベストメント・アンド・セキュリティーズのアナリスト、Park Sung-soon氏は「日本の輸出規制がさらに続けば、サムスン電子はEUV事業の運営に長期的な悪影響が及び、生産面の課題を達成するのが難しくなるのは避けられない」とみている。
韓国貿易協会のデータによると、昨年の日本からの輸入品で金額が最も大きかったのは半導体部品・機器だった。総額は110億ドルと、日本からの輸入全体の2割近くを占めている。
日本の輸出規制に対抗するため、韓国政府は国内のサプライヤーを育成する方針を打ち出した。しかしサムスン電子とSKハイニックスと取引しているあるサプライヤーの幹部は「国内サプライヤーの努力に加えて、ハイテク材料を内製化しようとする現在の国家的な取り組みは続くだろう。とはいえ全ての材料を自前で代替するのは不可能だ。そこに到達するには相当な時間がかかる。われわれは日本と協力する必要があるのだ」と打ち明けた。
(Heekyong Yang記者、Ju-min Park記者)