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オフィス向け無人コンビニ「600(ろっぴゃく)」 急拡大の秘密とは?

600(東京都/久保渓社長)はオフィス向け無人コンビニのベンチャー企業だ。サービス開始から約半年、契約台数は大手企業を中心に50台を超えているという。600はなぜ急拡大しているのか。久保渓社長に聞いた。

2017年6月創業のオフィス向け無人コンビニ「600」が急拡大している

4度目の起業!LINEに事業売却したことも

 「実は、今回で4度目の起業になります」

 2017年6月にオフィス向け無人コンビニサービス「600」を設立した久保社長は現在33歳。さわやかな若社長は少し照れながらこのように話した。

 久保社長は学生時代、米国の大学に進学。その後、エンジニアとして会社を設立したが、 「初めの2社はうまくいきませんでした」(久保社長)という。

 13年5月には、3社目「ウェブペイ」を設立。クレジットカード決済サービス「WebPay」をリリースし、15年2月にLINE(東京都/出澤剛社長)に事業を売却し、LINE傘下で、決済サービス「LINE Pay」の開発に携わっていた。

 17年5月に退社し、翌6月に4社目となる600を設立した。

混んでいるエレベーターがサービス開始のきっかけ

 600はオフィス向け無人コンビニのサービスだ。画像のような幅60cm、奥行き55cm、高さが175cm程度の冷蔵ケースをオフィスやマンションに設置し、中にある商品をクレジットカード決済で購入できるサービスを提供している。

 600のサービスを始めた背景として、久保社長はこのように振り返る。

 「LINEに勤めていたとき、昼休みにとても混んでいるエレベーターに乗るのが嫌でした。この5分、10分の無駄を省けるようなサービスとして、オフィス内で手軽に食品を買うことができるようにしたいと考えました。ターゲットは50m商圏です」(久保社長)

 設立から約1年かけて開発、実証実験を行い、18年6月にサービスを開始した。

RFIDタグを活用、センサーで商品を検知

 600の特徴はRFIDタグを活用することで、無人で食品を販売できる点だ。冷蔵ケースは施錠されており、クレジットカードをスワイプすることで、解錠される。ケース内の商品すべてにRFIDタグを貼っており、取り出すとケース内に設置しているセンサーがRFIDタグを読み取り、どの商品を取りだしたか判別する。モニターにその商品情報が表示され、クレジットカードで決済されるという仕組みだ。

 現状、100弱のSKU数でサービス展開していることが多いが、取り扱い可能な最大SKU数は社名の由来となっている600だ。ただ、商品数が多くなると、RFIDの読み取り精度が落ちてしまうため、現状の100弱くらいが「ちょうどいい」(久保社長)という。

 RFIDタグを読み取るセンサーは冷蔵ケースの上下に2つ設置している。タグの向きがセンサーと垂直になると読み取りにくかったり、アルミ製品と重なると読み取りにくかったりなど、商品の陳列にも若干の工夫が必要だ。

 RFIDタグの1個あたりコストは現在7円程度。「大量ロットで一気に注文すれば4円くらいまで下がる」(久保社長)そうだが、600としては今後しばらくは約7円で購入し続けるという。

 倉庫での入庫時にタグを商品に取りつける作業も600が行う。週に2回、商品の補充も600が担当する。

 これらの作業を負担しても、600は利益があるという。

 「近くのスーパーまで行けば500mlの飲料などは80円代で売っていますが、コンビニと同じような価格帯でも利便性を重視する人が600を利用してくれます。通常の小売よりも利ザヤが大きい分、手間がかかっても利益を確保することができています」(久保社長)

 リリースから約半年、すでに企業、マンションを中心に約50台の設置契約数がある。また、従業員はアルバイトも含め約20人となり、会社は成長を続けている。久保社長の4度目の起業は好調なスタートを切った。