後発企業に学ぶ!食品スーパーのアプリ導入で大切にすべきこととは
スーパーマーケットのアプリ導入で大切なこと
スーパーマーケットでのアプリ導入は各社進んでいる。20年12月導入のベイシアは明らかに後発組だが、このミニセミナーでは後発ならではのアプリ導入のポイントを聴衆目線で語っており、小売業界に関わる誰しもが思わず立ち止まって聞き入ってしまうような内容だった。
ミニセミナーで語られた内容で、とくに興味をもった点を簡単に紹介しておこう。
スーパーマーケットがアプリを制作・運営していくうえで重要なポイントとして3つをあげている。まず「本当にアプリは必要なのか、真剣に考えること」だ。簡単に導入できるものであってもそれなりのコストはかかるし、いったん始めてしまうとやめられない。やめると、「この会社、終わってしまったのではないか」と思われる。だからこそ社内でよく検討するべきだ。「何のためにやるのか」「顧客体験をどのように変えたいのか」といった道しるべも必要と語っている。
これからアプリ導入を考えている企業はスーパーマーケット業界での後発組になるのだから、「同質化」と「差別化」を意識するべきだ。他社アプリが標準搭載している機能(たとえば電子チラシ、クーポン発行など)は最低限用意する必要がある(同質化)。
アプリ開発企業はよく「他のスーパーマーケットではこういうことをやっているから、御社ではこちらをやりませんか」という提案をしてくるが、同質化よりも先に差別化を進めていくのは得策ではない。ベイシアアプリの場合「会員割引」「ポイント」「店舗の案内」といった同質化を先に進め、差別化については「会計時にアプリの会員証を通すだけで、割引も特別ポイントもすべての特典が受けられる。クーポン画面をいちいち表示させる必要もない」といった点に絞りこんだという。
次に「社内の体制」だ。やりきる体制をどうやってつくるか。立ち上げの体制はつくることはできても、運用していく体制を維持するのにはパワーがかかる。
パートやアルバイトが多くを占める店舗スタッフの中には、スマホでアプリを使っていない人も少なくない。そうした人たちが顧客に対し「ベイシアアプリをお持ちですか」「(アプリは)プラスチックカードよりもお得ですよ」と、何度も何度も声をかけていかなければ、アプリの利用者は増えていかない。しかし、それを徹底すれば必ず効果はあがるという。
一般にスーパーマーケットでの会計時にアプリの会員証を提示する割合は「100人いれば40人くらい」と言われているが、現在、ベイシアでは60人以上がアプリを提示するようになっている。
最後が「信頼できるパートナーを探すこと」だ。
大手ベンダーはいろいろなことに対応してくれるが、その分コストもかかる。コストを抑えるにはアプリ専門の事業者に頼むことになるが、基幹システムやECなどとの連携もあるためどうしてもマルチベンダーになる。そこで重要になるのが、スーパーマーケット企業である自分たちにとってのワンチームをつくることだという。
アプリのベンダーはアプリのプロだが、スーパーマーケット企業側の話になると腰が引けることもある。その際に「(彼らは)専門外だから仕方がない」とは思わずに、「ワンチームなのだから、こちら(スーパーマーケット側)の事情も勉強して、いっしょに知恵を出してくれ」と言えることが重要。もちろん、一方的にベンダーに押し付けるということではない。