ナイキ、アディダス、三越伊勢丹がすでに参入!メタバースは小売業をどう変えるか?
NIKEやGUCCIも参入
「食」の領域でも活用始まる
そうした流れを察知してか、先進的な小売業は続々とメタバースでの事業展開をスタートさせている。冒頭で取り上げたナイキやグッチは、「ロブロックス」内に自社のブランドの世界観を表現したバーチャル空間を展開。グッチはそのバーチャル空間で、アバターに着せることができる限定デジタルアイテムも販売している。
そのほかにも米国のメキシコ料理レストランチェーン「チポレ(Chipotle)」が、同じくロブロックス内にバーチャルレストランを出店。リアル店舗と連動したクーポン販促を展開するなど、メタバース上での顧客経験の再現が困難とされる「食」の領域でもメタバース活用はすでに始まっている。
ここまでは海外の事例だが、国内小売によるメタバースの取り組みも進んでいる。その代表格が、三越伊勢丹(東京都/細谷敏幸社長)が開発・運営する「REV WORLDS(レヴ ワールズ)」だ。「仮想都市」を標榜するレヴ ワールズでは、東京の「新宿」駅前をバーチャル空間上に再現しており、その中に“バーチャル伊勢丹”も登場する。“バーチャル伊勢丹”では、自社・外部企業のECサイトに誘導するかたちで、アパレルや化粧品、生活雑貨のほか生鮮食品を含んだ食品も販売している。
ただ、メタバースの導入・活用により、リアル店舗、あるいは自社ECの売上がアップするかというのは未知数だ。現状、小売業によるメタバースの取り組みの多くは、自社のブランドの世界をより具体的なイメージをもって表現する、あるいはオンラインゲームのメーンユーザーである若年層の取り込みをねらったものが多い。ブランディングか新規層の取り込みか、それともデジタルアイテムの販売か。デジタル活用全般に言えることだが、先進技術導入を検討するうえでは、「メタバースを通じて何を実現するのか」を明確化するのが重要であることは間違いない。
メタバース導入には、コストの問題も立ちはだかる。たとえば、仮想空間上に「バーチャルストア」を展開するとして、膨大な量の商品を扱う小売業は、商品の一つひとつを「3DCG化」していく必要がある。一般的な食品スーパーが1万SKU以上を取り扱うことを考えると、作業量も膨大になり、そのぶんコストも高くなる。三越伊勢丹はそれらの作業を内製化することで自社運営を実現しているが、新たなメタバースプラットフォームの登場を待つという手もあるだろう。
「3次元のインターネット」ともいわれるメタバース。インターネットの普及により、お客の購買行動、顧客データに対する考え方、マーケティング方法など、かつての小売業の常識、定石は一変してしまった。メタバースがインターネットの登場に匹敵するインパクトをもたらすものであるならば、今のうちからキャッチアップしておくのがよいはずだ。
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