「優れた接客が資産」ユナイテッドアローズ藤原義昭CDOに聞く、DX戦略と店舗の役割とは
OMOを加速させる
ユナイテッドアローズは広告宣伝や販促でデジタルシフトを加速させ、オンラインでの顧客とのコミュニケーションを積極的に増やし、来店促進に向けたデジタルマーケティング施策を実行してきた。デジタル広告のほうが紙媒体よりも圧倒的に多く、SNSの運営にも力を入れている。
「ユナイテッドアローズの強みである対面接客を通じた顧客とのリレーションの強さをどのようにデジタルに置き換えるかが課題」(藤原氏)だ。店舗の販売スタッフをInstagram(インスタグラム)のライブ配信やYouTube(ユーチューブ)の動画に出演させたり、販売スタッフのコーディネイトやスタイリングを公式ブログで紹介するなど、販売スタッフを媒介として顧客とのコミュニケーションをオンラインでも活性化させている。
デジタルでの顧客接点の創出は、従業員視点からも意義がある。顧客との1対1の対面接客で培ったトーン&マナー、商品知識、コーディネイトやスタイリングの提案力などを生かし、オンラインでも店舗でも「ユナイテッドアローズらしさ」を一貫して保ちながら、不特定多数の視聴者に商品の特徴や魅力を動画でわかりやすく伝えるというスキルアップの機会にもなっているのだ。
デジタルでの顧客接点が増えることで、OMO(オンラインとオフラインの融合)が進みつつある。
依然として、店舗にふらりと立ち寄って販売スタッフと対面でコミュニケーションし、欲しい商品が見つかったら購入するという従来のカスタマージャーニーが主流だ。とはいえ、デジタル広告やSNSでの集客を強化した2020年頃から、欲しい商品を事前にECで調べて来店し、店舗で購入する「ウェブルーミング」や、店舗で実際の商品を手に取って確認した後、ECで購入する「ショールーミング」も増えてきた。
藤原氏は「EC比率は今後さらに増加するだろう」と見通す一方で、「店舗がなくなると、お客さまから想起されづらくなる。店舗はフィジカルな顧客体験をお客さまに提供する場であり、リアルな空間で多くの人びとの目に触れるメディアでもある」と店舗の役割を強調。「店舗こそ『一丁目一番地』であり、そのアドオンとしてデジタルでの顧客体験がある」との基本的な方針を示す。
独自のポイントプログラム「UNITED ARROWS HOUSE CARD(ユナイテッドアローズ ハウスカード:以下、ハウスカード)」は公式アプリやLINE(ライン)と連携しており、顧客とオンラインでもつながるコミュニケーション基盤となっている。CRM施策として、店舗とECの購買履歴を統合し、「ハウスカード」の会員に向けて、それぞれの嗜好やニーズにカスタイマイズした「One-to-Oneマーケティング」に近い提案をメールマガジンやLINEで行っている。
2021年度末までには、自社ECをリニューアルする計画だ。自社で運営する物流センターを稼働させ、OMOのさらなる推進をはかっていく。