小さな企業が集まったコーポラティブSM大手絶大な低価格とDXで大手と闘う!

平山 幸江 (在米リテールストラテジスト)
Pocket

あまりなじみのない企業のかたちとして、「コーポラティブ」という形態の食品スーパー(SM)がある。小売業者による協同組合グループだ。コーポラティブSMとしては全米トップの企業がウェイクファーンフードコーポレーション(Wakefern Food、以下ウェイクファーン)だ。その低価格戦略とユニークな商品戦略に注目だ。

コーポラティブSM、ウェイクファーンとは

 ウェイクファーンが誕生したのは1946年。デルモンテフード社の営業担当者が、担当するニュージャージー州の地元SM8社が経営に苦労する姿を見て「連合」を思い付き、各社1000ドルの資金を出し合って設立された。

 51年に「ショップライト」と店名を統一して本格的に多店舗化を開始、95年には絞り込んだ品揃えで低価格のプライスライト(Price Rite)を、2019年にマンハッタンの都心型SMグルメガラージ(Gourmet Garage)、翌年同じくフェアウェイマーケット( F a i r w a yMarket、以下フェアウェイ)を買収した。

 現在はニュージャージー、ニューヨーク、コネチカット、ペンシルバニア、マサチューセッツ州など北東部で計50社365店舗を運営している。

ショップライトの「コロンビアパーク店」
ショップライトの「コロンビアパーク店」(ニュージャージー州)

 「コーポラティブSM」は米国でもよくコープ(生活協同組合)と混同されるが両者はまったくの別物。コーポラティブSMは独立資本のSMチェーンが共同で資金を出し合い、物流や仕入れなどで規模の経済を共有する組織形態だが、コープは日本の生協と同様、消費者が協同で運営・利用する組織だ。

 ウェイクファーンは小売事業と卸売事業を持ち、業績は非公開だが業界紙によると23年度年商は196億ドル、このうち約100億ドルを小売事業が占める。小売事業の売上だけで、1ドル150円換算で1兆5000億円に達する。加盟企業は独自性を保ちながら、規模の経済を生かして大企業と伍していく。

 具体的には物流、仕入れ、プライベートブランド(PB)開発にとどまらず、カテゴリーマネジメント、内装デザインから設備購入、店舗開発、IT、マーケティングサポート、広報活動まで加盟社のあらゆる業務をサポートする。

 ウェイクファーンは02年と早期からオンライン販売に着手。20年からインスタカート(Instacart)、24年にドアダッシュ(DoorDash)と提携し、ネットスーパーの拡大に力を入れている。加盟企業のフェアウェイはネットスーパー激戦区であるニューヨーク市で競争優位性を獲得するために昨年12月、インスタカートとともに30分配送を開始した。

 また23年にはスマートカートのケイパーカート(インスタカート傘下のケイパーが開発)のテスト導入を開始、当初ショップライト、フェアウェイ各1店舗からスタートしたが、現在ショップライト11店舗に拡大している。

 今年9月にはシンべ・ロボティクス社と提携し、自動店頭在庫管理ロボット「タリー」をショップライト37店舗に導入、欠品や違う場所にある商品の発見を強化し在庫管理精度を高める。

アルディをも上回る?ショップライトの低価格

 360店舗以上を展開する「ショップライト」は、41~43ページでも指摘するとおり、基礎食品ではウォルマート(Walmart)やアルディ(Aldi)を超えるほどの低価格が特徴だ。しかし、“ただ安いだけ”の店ではない。

 そのことを確かめるため、ショップライトの「コロンビアパーク店」(ニュージャージー州)を訪れた。

続きを読むには…

この記事はDCSオンライン+会員限定です。
会員登録後、DCSオンライン+を契約いただくと読むことができます。

DCSオンライン+会員の方はログインしてから閲覧ください。

記事執筆者

平山 幸江 / 在米リテールストラテジスト

慶應義塾大学、ニューヨーク州立ファッション工科大学卒業。西武百貨店勤務後1993年より渡米。伊藤忠プロミネントUSA(Jクルージャパン)、フェリシモニューヨーク、イオンUSAリサーチ&アナリシスディレクターを経て2010年より独立。日系企業の米国小売事業コンサルテーションおよび米国小売業最新トレンドと近未来の小売業をテーマに、ダイヤモンド・リテイルメディア、日経MJ他に執筆、講演会多数。

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態