アークランズ提携でホームセンター内に出店! 「ロピア姫路ムサシ店」の売場を解説

森本 守人 (サテライトスコープ代表)

テンション高く買物するお客

 姫路ムサシ店の青果売場は、コンパクトな印象だ。それでもロピアが独自の世界観の演出、表現に力を入れ、お客に伝えようとしているのを強く感じる。

 再度、話を入口付近に戻すと、通常の食品スーパーであれば、最初の平台や什器の左右には通路が設けてあり、そこから店の奥へ抜けられる。しかし姫路ムサシ店はそうはさせない。右側は壁になっているため左方向へ行く必要があり、最初の突き当たりまで行くとターンする流れになっている。つまりお客を逆S字のルートで蛇行させながら回遊させるのだ。

 途中、要所要所で安さを訴求できる商品を圧倒的な迫力で陳列している。とくにターンするポイントでは、前述のバナナのほかイチゴなど、大量陳列や売場づくりによりお客を楽しませている。売場に添えられている手書き風POPやボードもユニークだ。

 目立つ掲示物の1つは「チーフの想い」と題した大型ボード。そこには「私、この仕事を始めて30年」から始まるメッセージが語り口調で記されている。「自分が仕入れて売った野菜、果物が美味しかったと言われるとやって良かったと嬉しくて」と、仕事への熱い想いを切々と綴っている。

 一方、随所で並ぶ独自商品も魅力的だ。姫路ムサシ店では、スイーツに力を入れており、青果部門の冷蔵什器では、スポンジの上に生クリーム、いちごを数多く乗せた「いちごどっさりケーキ」(大サイズ税抜1990円、小サイズ同1390円)が見られた。

青果部門に並んでいた「いちごどっさりケーキ」

 これら青果部門でロピアの世界観を体感したお客は、続く鮮魚、精肉部門を、普通の食品スーパーとは異なる気持ちで歩くことになる。普段の生活ではなく“非日常”のモードに切り替わった結果、見た商品がすべて新しく見え、次々をカゴに入れたくなる衝動に駆られる。

 実際、各所では興奮して店内を回遊するお客の姿を多々目撃した。ある母と娘の2人連れは「あの魚見て、見て!めっちゃ新鮮そうな色やわ」と高いテンションで会話を交わし買い物を楽しんでいた。

マイバッグいっぱいの買い物をしているお客が多かった

 以前にこの場所に入っていた食品スーパーは、見やすく、選びやすく、手に取りやすい売場づくりを行う、チェーンストア理論に忠実な食品スーパーを展開する企業だった。かつてを知っているお客からすれば、現在はまったく違う店にいるかのような感覚に陥るはずだ。ロピアの店舗に来ると、演出、工夫次第で、これほどお客の気持ちを変えられると感じる。(近日公開の後編に続く)

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記事執筆者

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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