破竹の勢いで出店を続けるロピア(神奈川県/高木勇輔代表)。2021年2月期に入ってからは5月、6月、7月と3カ月連続で新規出店、9月には「田無店」(東京都西東京市)のオープンを予定するなど、その勢いはとどまるところを知らない。怒涛の出店のなかで、売場ではどのような進化が見られているのか。前編に続いて、2020年8月末現在の最新店「千城台店」(千葉県千葉市)の売場を解説する。(調査日7月26日)※本文中の価格はすべて本体価格
肉に並ぶ「ロピア名物」!圧巻の寿司コーナー
ロピアの既存店の多くは、青果と精肉のあいだに鮮魚売場を配置しているが、千城台店では入口から見て店舗奥側の主通路上、約26坪(歩測)のスペースで展開する。
壁面では、マグロやタイなどの刺身用のほか、ウニやタコ、珍味などを扱う。既存店でもおなじみの寿司・海鮮丼コーナーも設けている。2台配置した平台では、切身や丸物、塩干、冷凍魚などを販売。壁面と平台で巧く商品が配置された、機能的な売場だ。
商品を見ていくと、壁面のマグロコーナーでは「養殖生本まぐろ(ブーメラン)」(100g500円)、「本まぐろ赤身刺身用(マルタ島)」(100g350円)などを販売。このあたりの商品は定番となりつつあるようだ。
ロピアの鮮魚売場では刺身の扱いがなく(一部店舗では取り扱いあり)、寿司が同部門の看板商品となっている。大ぶりなネタが特徴で、初見のお客は大きなインパクトを受けるだろう。品揃えも9貫パックから56貫の大容量パックまで幅広く、個食からパーティー需要までさまざまなシーンに対応できるラインアップとなっている。海鮮丼は、「いかソーメンいくら丼」(690円)、「ねぎとろ丼」「鉄火丼」(各590円)など品揃えを絞り込んでいるようだ。
平台では、「スルメイカ」(3杯480円)、「真鯛」(1尾1390円)、「金目鯛」(1尾780円)など各種丸物を販売。「アトランティックサーモン」(3枚690円)、「ぶり」(4切580円)など切り身は売れ筋中心の品揃えとしている。
日配と冷凍食品は堅実なラインアップを提供
続いて日配売場を見ていく。和日配は店舗奥側の壁面36尺のスペースに豆腐や麺類、店舗右側壁面83尺に練物、納豆、漬物、水物などを配置する。売れ筋をベースとしたオーソドックスな商品構成となっている。続く右側壁面23尺で洋日配売場を展開しており、乳飲料、チルド飲料などを配置している。
冷凍食品は平台売場120尺と、上段リーチイン、下段オープンケース売場50尺で展開する。オープン時は全品6割引きのセールを行っていたが、8月は5~5.7割と単品ごとに割引き率を変えているようだ。
平台売場では、麺類、米飯類、揚げ物などを販売している。麺類で19SKU、米飯類で26SKU、唐揚げやトンカツといった揚げ物関連商品で16SKUを揃える。唐揚げと餃子にとくに力をいれているようだ。そのほか、「モリタン・道産コロッケ」(70個入599円)など業務用商品も20SKU揃える。
リーチイン&オープンケースの売場では、傘下の輸入商社であるユーラスが仕入れる、イタリア産の「冷凍ティラミス」(500g499円)をはじめ、オリジナル商品を豊富に揃える。12尺の冷凍野菜コーナーでもユーラス社開発の枝豆など独自性のある商品を差し込んでいる。日配と同様に冷凍食品も売れ筋商品をベースとした堅実な商品構成となっており、競合を意識した価格対応も行われているようだ。
調査日はアイスクリームの「半額セール」(一部商品は除く)を実施しており、「個食タイプ」は70円~90円、「マルチタイプ」は165~175円、氷菓は35円前後の商品を豊富に揃えていた。売れ筋の「ハーゲンダッツミニカップ」は199円で提供するなど、夏シーズンを迎えたこともあり、攻勢をかけているようだ。
日配と冷凍食品の商品構成は、ほかの食品スーパーと大きく変わらないが、各カテゴリ―に目玉商品を配置し、地域一番の低価格を維持しているようだ。
ワインを「料理別」に提案
売場中央には11列のゴンドラを配置し、飲料、酒酒類、菓子、加工食品の売場を展開する。
飲料は500mlペットボトルと大容量を対になるようなかたちで配置しており、それぞれゴンドラ下段はケース売りコーナーとしている。売れ筋の「伊藤園・お~いお茶」は500m ℓ 64円、2 ℓ138円で販売。ロピアのプライベートブランド商品「掛川茶2 ℓ」(89円)を価格訴求商品として提供する。
酒類は「缶チューハイ」「ノンアルコール飲料」「ビール系飲料」と「日本酒」「焼酎」「ウヰスキー」「ワイン」が対になるように配置している。「缶チューハイ」コーナーは27尺で、「キリン・氷結350m ℓ」(1缶95円、6缶570円、24缶2270円)で販売。ビール系飲料は36尺で、売れ筋の「アサヒビール・スーパードライ350mℓ」は1缶175円、6缶1013円、24缶4049円で提供する。日本酒、焼酎乙類・甲類、ウイスキーは売れ筋をベースで、競合を意識した低価格訴求が行われているようだ。
ワインコーナーは24尺で、国産・輸入ワインを揃える。乳製品売場の近くにも売場を設けており、ユーラス社による直輸入ワイン21SKUを「ヒレステーキ」「ホルモン」「プルコギ」など“料理別”に提案するなどユニークな販促も行っている。
菓子と加工食品の取り扱いSKUは、一般的な食品スーパー店舗とそれほど変わらないようだ。全体的に品揃えは絞られており、効率のいい売場と言えるだろう。
前編でも述べたが、売場全体から伝わってくるのは「慎重さ」である。これまでは「攻める」イメージが強かったロピアだが、総店舗数50店舗を突破し、確実に売上および利益をとれる売場づくりに移行していると思われる。これまでのロピアの店と比較すると、多少の「物足りなさ」なようなものも感じるが、チェーン展開の状況を考えると、的確かつ懸命な判断であると言えるのではないだろうか。
快進撃の原動力? 「ロピア語録」とは
ロピアの全店舗を訪ねたことがある筆者が最近の楽しみにしているのが、店舗の天井から吊り下げられている「ロピア語録」だ。この「語録」を読んでいると、ロピアの経営理念、現場理念が伝わってくる。当然、お客の目にも入るので、お客にもロピアがどのような会社なのかというイメージを強烈に印象づけることができるだろう。
数ある「語録」のなかで、筆者がとくに好きなのが「売場は生物だ」という言葉である。店舗を調査する際、筆者は最低でも3~4時間をかけて売場を拝見するようにしている。感覚的な話になるが、“生きている売場”からは「買ってください」「いい売場でしょう」というメッセージが伝わってくる。
売場はまさに「生物」であり、働く従業員がどれだけエネルギーを注いだかで、売場は大きく変わる。「売場は生き物だ」という言葉は、現場主義の発想であり、「売場は現場スタッフがつくっていくものだ」という強い意志を感じる。「語録」はこうした考えを具現化させるためのツールでもあると筆者は考える。
ロピアのような急成長企業は店舗展開のスピードが早く、教育が追いつかずに企業理念がかすんでしまうという事態に陥りやすい。各店舗に大量に吊るされた「語録」は、“戒め”という意味でも機能しているのではないだろうか。こうした現場レベルでの企業理念の共有化が、ロピアの快進撃の原動力となっているのかもしれない。
(店舗概要)
住所 千葉県千葉市若葉区千城台北 3丁目21-1
開店日 2020年7月6日
売場面積 約490坪(歩測)
営業時間 10:00~20:00
アクセス 千葉都市モノレール2号線「千城台」駅より直結