長野県で食品スーパーを展開するツルヤが、2020年に初めて県外に出店する。場所は群馬県前橋市。高質なオリジナル商品が圧倒的な支持を集め、業界関係者からも一目置かれる“最強のローカル食品スーパー”が関東進出を果たすことになる。今後の動きによっては、関東圏の食品スーパーは早急に対策を練る必要が出てきそうだ。
地元メディアも大きく報道!売場面積は最大規模に?
「ツルヤが群馬出店へ」――。
7月下旬、こんなニュースが長野県と群馬県の地元メディアで大きく報じられた。同17日付けで群馬県が公告した大規模小売店舗の新設に関する届出によると、ツルヤは群馬県前橋市に「前橋南ショッピングパーク(仮称)」を開設。新設日は2020年10月31日、店舗面積は約4900㎡となっている。地元紙の報道によると、ツルヤ単独の売場面積は同社最大規模となる、約3500㎡になる見込みだ。
その後8月12日にはツルヤのホームページ上でも、20年春オープンの「茅野店」(長野県茅野市)とともに、「ツルヤ前橋南ショッピングパーク」を20年秋に開業予定であることが発表された。
ツルヤは長野県小諸市に本部を置く食品スーパー企業。もともとは同市を含む東信地方や、長野市を中心とする北信地方を主な商勢圏としてきたが、近年は県内全域へと出店エリアを拡大しており、19年2月には南信地方の諏訪市に「上諏訪店」を出店。店舗数は34店、18年6月期の売上高は約861億円を数える県内最大手の小売企業である。
ツルヤの特色は徹底的に標準化された売場と、品質の高いオリジナル商品にある。
売場面積は2000㎡前後をスタンダードとし、売場レイアウトや商品政策は各店舗でほぼ共通している。こうした標準化によって運営コストを下げる一方で注力するのがオリジナル商品の開発だ。菓子、調味料、乾物、飲料・酒類などさまざまなカテゴリーで、地元メーカーを中心とする外部企業と共同開発したオリジナル商品を売場の随所で展開。ナショナルブランドや他社のプライベートブランド商品を凌駕する品質の高さが顧客から熱烈な支持を集め、それ自体が来店動機となるほどの商品力を有している。有力食品スーパー企業のトップも注目企業の1つとして挙げるほどだ。
※ツルヤのオリジナル商品については下記記事を参照
長野のローカルスーパー「ツルヤ」のPBが強すぎる!
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迎え撃つことになったベイシアの反応は!?
出店場所はベイシアの“お膝元”
さて、届け出で明記されている住所(群馬県前橋市公田町670番地1)を調べてみると、北関東自動車道「前橋南IC」から1.6kmほど離れた場所である。ツルヤの拠点がある長野県小諸市からは、高速道路を使えば1時間超で到着するため、物流面や営業面でも大きな支障はなさそうだ。
店舗周辺を見渡すと、半径3km圏内には「ベイシア前橋みなみモール店」「しみずスーパー前橋亀里店」「フレッセイ大利根店」「コストコホールセール前橋倉庫店」などがあるほか、ベイシアの本部も目と鼻の先の距離にある。
お膝元で迎え撃つかたちになったベイシアは、ツルヤの出店について、「『よりよいものをより安く』をさらに追求して、お客さまの暮らしのパートナーとして今後も選ばれる店づくりを行っていきます」(広報)とコメント。冷静にツルヤの“上陸”を迎える構えだ。
とはいえ、ベイシアをはじめ北関東で店舗を展開するSM各社は、警戒レベルを引き上げざるを得ないだろう。長野県外でのツルヤの知名度はまだそれほど高くはないが、前述のとおり、同社のオリジナル商品はそれ単体で集客につなげられる爆発力を持っている。新天地・群馬でも着実にファンを拡大していくポテンシャルは十分にあるといえる。
一方、ツルヤの出店ペースは昨今、年間1店舗程度と緩やかであり、今回の出店を皮切りに北関東で急速にドミナントを形成していく可能性は低いとみられる。しかし、北関東を重点エリアとして今後継続的に出店していくとなれば、競合するSM企業は、とくに商品政策の面で何らかの対策を打ち出す必要に迫られるだろう。