メニュー

オーケーと戦うために3つの差別化―― 東急ストア、年商41億円の繁盛店を大改装

 東急ストア(東京都/須田清社長)が6月7日、同社のなかでも指折りの繁盛店「あざみ野店」(神奈川県横浜市:以下、あざみ野店)を全面改装した。2019年2月、超至近距離にオープンしたオーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)の新店に対抗する。首都圏で出店攻勢をかけるオーケーと同業他社はいかに戦っていくのか。

東急ストアは6月7日、繁盛店の1つ「あざみ野店」を改装オープンした

旗艦店の向かいにオーケーの新店が・・・

 あざみ野店が営業するのは、東急田園都市線「あざみ野」駅に直結する東急グループのビルの1・2階部分。年商で41億円を稼ぐ、同社で4番目に売上高の高い店舗だ。

 東急グループが、同ビルに隣接する2施設を合わせて商業施設「エトモあざみ野」として一体的にリニューアルしたことから、あざみ野店も全面改装を実施した。

今年2月、店舗北側、道路を挟んだすぐの場所に「オーケーあざみ野店」がオープンした

 今回の改装で東急ストアが強く意識した競合店がある。今年2月、店舗北側の道路を挟んですぐという至近にオープンした「オーケーあざみ野店」だ。

 オーケーは近年、国道16号線内側の都市部での出店を強化。年間10店以上のペースで店舗網を拡大している。そのオーケーの新店が、東急ストアの重要な繁盛店の1つを直撃したかたちだ。

 オーケーあざみ野店の売場面積は約690㎡と決して大きくはない。しかしオーケーは、徹底したローコスト・オペレーションにより、経営方針に掲げる「高品質EDLP(エブリデー・ロープライス)を実現し消費者の高い支持を獲得。1店舗当たりの平均年商は約30億円と業界でもトップクラスで、競争力の高い食品スーパーだ。

非食品を大胆に縮小
食品の品揃えで勝負

 このような環境のなか、東急ストアはいかに対策を打つのか。東急ストア営業本部商品統括室商品企画部長の寺井紀樹氏は「品揃えと買い回りの良さで勝負する」と説明する。

 あざみ野店の売場面積は、1階が1011㎡、2階が1033㎡の計2044㎡で、オーケーの3倍の広さを持つ点が強みとなる。この広さを生かすべく、非食品をを縮小し、食品の品揃えを拡大した。

 改装前、2階では非食品と衣料品売場を展開していたほか、売場面積約171㎡の書店がテナントとして入居していた。これを、書店部分を直営売場としたほか、非食品は34%、衣料品は85%も従来よりも品揃えを縮小し、その分食品の取り扱いSKU数を約6800から約8700まで拡大したのだ。

食品の品揃えを、改装前の約1.3倍となる約8700SKUまで拡大した

 なかでも品揃えを拡大したカテゴリーの1つが酒類だ。改装前は3尺の棚4本だけで売場を展開していたが、写真上のように大きくコーナー化した。なかでもワインは取扱SKU数を3倍に拡大。1500円前後の品質にこだわった欧州産ワインの提案を強化している。

酒類のなかでも売上好調の欧州産ワインの販売を強化。1500円前後の価格帯の商品を充実させている

加えて、他店ではなかなか扱っていないこだわり商品も積極的に取り扱う。たとえばこの日は飲料売場で、ブラジルから日本に上陸したこだわり商品として、濃縮還元タイプではない、ストレートジュースを試飲販売していた。

他店ではなかなか扱っていないこだわり商品も積極的に取り扱う

次のページは
オーケーにない、残り2つの差別化ポイント

手間をかけても出来たて総菜を提供

メーン出入口のすぐの場所に総菜売場を設置。総菜・ベーカリーを合わせて約460SKUと幅広い品揃え提供する

 次に、買い回りの良さでは、駅からの帰宅者が即食商品を短時間で購入できる売場レイアウトに変更した。

 2階部分に生鮮食品売場を移設し、1階では総菜・ベーカリー売場を、メーン出入口からすぐの場所に設置した。総菜・ベーカリーは合わせて約460SKUと幅広い品揃え提供し、改装前比2%増の15%を売上高構成比の目標に設定する。 

バラ売りの揚げ物を約40SKU販売。21時頃まで揚げたてを提供する

 総菜のなかでも力を注ぐのがバラ売りの揚げ物だ。改装前のおよそ倍となる約40SKUを揃えて、21時頃まで揚げたての商品を並べる。「多少手間をかけてでも出来たて商品を並べることで『東急ストアにはおいしい総菜がある』という印象をお客さまに持っていただき来店につなげたい」(営業本部商品統括室デリカ食品部長の金子信一氏)。

 

 そのほか、あざみ野店は、全体的に売場の通路幅を広く確保した。駅前立地で、生鮮食品やグロサリーなどのふだんの食卓に必要な商品から、総菜・ベーカリー、日用品まで揃い、ゆったりした空間のなかで買物ができる店は近隣住民から重宝されそうだ。

 オーケーは低価格実現のため、商品を絞り込み、売場はシンプルかつワンウェイを特徴としている。「品揃えと買い回りの良さ」を追求した東急ストアのあざみ野店の売場づくりは、オーケーとの差別化につながりそうだ。

2階では、生鮮食品、グロサリーだけでなく、化粧品や医薬品も販売。ワンストップショッピングを可能にしている

 東急ストアの改装にかけた投資額は非公表。しかしレイアウトから内装、什器まで全面リニューアルをしていることから大きな投資額がかかっていると想定される。

 それにもかかわらず改装後の年商目標は改装前の96.5%の約39億円に設定する。この数字からわかるのは、オーケーの新店の進出が既存の食品スーパーに与える影響力の大きさだ。

 オーケーは、立地が悪く、他社の食品スーパーが撤退に追いやられた物件でも果敢に出店し繁盛店にしてしまう実力の持ち主だ。猛スピードで出店するオーケーといかに戦うのか。東急ストアだけでなく、国道16号線内側で店舗展開する企業にとって共通の課題となってくるだろう。

【東急ストアあざみ野店概要】
所在地  神奈川県横浜市青葉区あざみ野2-1-1
営業時間 6:00~25:00
売場面積 2044㎡(1階1011㎡、2階1033㎡)
従業員数 正社員25人、パート・アルバイト97.2人(8時間換算)
レジ台数 11台(うちセミセルフが9台)