ライフと東急ストアが参画! 食品マッチングプラットフォーム「ステナス」とは?

取材・文:阿波 岳 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

日本の小売業界が直面する大きな課題の一つが、食品ロスだ。一方で、食事の機会が十分に得られない子育て世帯など、支援を必要とする人々は増加している。この2つの社会課題の解決に向けて、食品ロス削減や地域貢献に取り組むネッスー(東京都/木戸優起社長)は106日、ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長:以下、ライフ)と東急ストア(東京都/大堀左千夫社長)とともに、食品マッチングプラットフォーム「ステナス」を活用した実証実験を開始した。

ライフ,東急ストア

食品ロスと「子供の相対的貧困」の解決めざす

 政府は2000年の食品ロス(事業系547t、家庭系433t)を基準に、30年までに食品ロスを半減させる方針を掲げており、各企業にとっても対応が急務となっている。環境省の推計によると、23年には年間約464万トンの食品ロスが発生し、そのうち約48万トンを小売業が占めている。

 これまでも小売各社は、賞味期限の延長や需要予測の精度向上などを通じて食品ロスを減らすことに努めてきた。しかし、乳製品や総菜、生鮮品など賞味期限や販売期限が短い商品は、大幅な削減が難しい側面がある。

 一方で、日本では「子どもの貧困」も深刻な社会課題になっている。厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、21年時点で子どもの約9人に1人が相対的貧困(※ある国や地域の生活水準の中で比較したときに、大多数よりも貧しい状態のこと)状態にあるという。


出所:厚生労働省「国民生活基礎調査」、認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親家庭の生声白書」

 とくにひとり親世帯では約2人に1人が該当する。認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンの「ひとり親家庭の生声白書」(2024年)によると、学校給食がない休日には、ひとり親世帯の子どもの3人に1人が12食以下で過ごしているというデータがある。

 これら2つの社会課題を同時に解決するため、ネッスーは食品マッチングプラットフォーム「ステナス」を提供している。店頭で販売できなくなった賞味・消費期限が迫った食品を、アプリを介して必要とする利用者とマッチングし廉価で販売することで、食品ロス削減につなげるという仕組みだ。店舗は廃棄予定品をシステムに登録し、利用者(一般会員および児童扶養手当を受給している世帯など支援対象者)はアプリ上で商品を選び、店頭の専用冷蔵庫で当日受け取る。

ステナスの利用画面

 こうしたネッスーの取り組みや考え方に賛同したのが、食品スーパーのライフと東急ストアだ。2社は10月、ステナスを活用した実験に参画した。

 東急ストア サステナブル推進室の片衛賢司氏は「食品が廃棄されてしまう現状を何とかしたいという思いのもと、ロス削減を進めると同時に、地域で支援を必要とする方々のお役に立てればと、この取り組みをスタートした」と話す。

 一方、ライフ サステナビリティ推進室の谷口真美氏は、「これまではフードバンクなどで生鮮食品を扱えず、主に加工食品が中心だったが、ステナスの仕組みを活用すれば、必要な方に生鮮食品も届けることができる」と述べた。

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取材・文

阿波 岳 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

大学卒業後、社会の荒波にもまれる日々を経験。そこで書籍や会報誌の編集に携わるうちに、メディア事業への興味が芽生え、今に至る。
趣味は喫茶店巡りと散歩。喫茶店での一杯のコーヒーや、街角の散策を生きがいとしている。
これまで全都道府県を制覇するという小さな目標を達成した。何かを極めたり、制覇したりすることには、なぜか人一倍の熱意を注いでいる。
最近の悩みは、ここ数年で増えた体重との戦い。健康の大切さを意識しつつも、喫茶店のコーヒーに合わせたスイーツや、ランチの大盛りがやめられない。今日もまた元気に「大盛で!」と注文しつつ、明日こそ控えめにしようと心に誓っている。

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