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イオンのビオセボン(オーガニック食品スーパー)の店舗戦略

イオンがオーガニック食品スーパー「Bio c’ Bon(ビオセボン)」で販売強化

イオン(千葉県/岡田元也社長)がオーガニック市場の開拓に本腰を入れている。2018年はオーガニック食品を中心に扱う食品スーパー(SM)「Bio c’ Bon(ビオセボン)」を7店舗連続でオープン。12月には本国フランスのBio c’ Bon SAS(BCB社)への資本出資を決めた。ビオセボンの最新店舗から市場開拓に向けた戦略をレポートする。

12月に開店したビオセボン横浜元町店

2018年にオーガニック食品スーパー「ビオセボン」を一気に7店舗オープン

「ビオセボン」はBCB社のオーガニックSMチェーンで、フランスをはじめ欧州で約120店を展開している。イオンは2016年6月、BCB社を傘下に持つ、マルネ・アンド・ファイナンス・ヨーロッパ(M a r n e & F i n a n c eEurope)社との折半出資でビオセボン・ジャポン(千葉県/土谷美津子社長)を設立。同年12月に日本の1号店「麻布十番店」(東京都港区)を開店した。

 麻布十番店の売場面積は約130坪で、生鮮3品、加工食品、酒類、日用品など約3000品目を揃えた。そのうちの多くが、国内のオーガニック基準である有機JAS規格を満たす商品や、海外から輸入したオーガニック商品だ。ただし、オーガニックを中心とした品揃えにこだわるものの専門性を前面に打ち出すのではなく、あくまで「ふだん使い」してもらえるSMづくりを実践することで、日本でのオーガニック市場の開拓を図ってきた。

 そして18年4月、2号店の「中目黒店」(東京都目黒区)をオープン。そこから一気に東京都と神奈川県の都心部に6店を連続出店し、店舗数を8店まで拡大した(表)。

表 ビオセボンの店舗と開店日一覧

開店日 店舗名 所在地
2016年 12月 麻布十番店 東京都港区麻布十番2-9-2
2018年 4月 中目黒店 東京都目黒区上目黒1‐26‐2 中目黒アトラスタワー内
5月 外苑西通り店 東京都渋谷区神宮前3‐42‐2
6月 新百合ヶ丘店 神奈川県川崎市麻生区上麻生1‐19 イオン新百合ヶ丘店2階
10月 碑文谷店 東京都目黒区碑文谷5‐6‐1 イオンスタイル碑文谷 別館1階
11月 東武池袋店 東京都豊島区西池袋1‐1‐25 東武百貨店池袋店 プラザ館地下2階
11月 赤坂店 東京都港区赤坂4‐3‐6 A-FLAG赤坂1階
12月 横浜元町店 神奈川県横浜市中区元町5-183

 2号店の開店までに約1年4カ月を要した理由についてビオセボン・ジャポンの土屋美津子社長は「麻布十番店で少しずつ品揃えを変えてお客さまの反応を見るなど、商品政策を研究していたため」と説明している。そして、重要な指標の1つとしていた青果の売上高が確保できるようになったため、多店化に踏み切ったかたちだ。実際、麻布十番店では青果の売上高構成比が全体の2割ほどを占めるようになっており、全体の売上高も対前年同月比で2ケタ伸長を続けているという。

ビオセボンの立地戦略

次にビオセボンの立地戦略について確認していこう。1号店の麻布十番店は、都営地下鉄大江戸線・東京メトロ南北線「麻布十番」駅から南へ約200m、周辺に住宅が多いエリアにある。

レイアウトは、住宅が多い場所では青果売場を、オフィスが多い場所では総菜売場を出入口すぐの場所に配置する。写真は「碑文谷店」

 一方、18年に開店した7店を見ると、さまざまな立地に出店しているのが特徴的だ。たとえば「新百合ヶ丘店」と「碑文谷店」はイオングループの総合スーパー内、「中目黒店」は高層マンションの1階部分、「東武池袋店」は百貨店の「東武百貨店池袋店」内、「赤坂店」は周辺にオフィスの多い立地、「外苑西通り店」と「横浜元町店」はオフィスや住宅、ショップなどが入り混じる人通りの多い場所に店を構えている。今後「ビオセボン」がどのような立地に出店するのが相応しいか検証をしているようにも見てとれる。

 また、1号店と比較して2~8号店の売場面積は約30~100坪と小さく、そのため取扱品目数も約1600~2500品目と少なくなっている。1号店は旗艦店という位置づけで、今後はこのような規模、取扱品目数の店舗がメーンとなりそうだ。

実験・検証を経て、青果、デイリー、子供向け商品を強化

ビオセボンは麻布十番店での実験・検証を経て、店づくりをいかに進化させているのか。

 まず、青果の品揃えを拡大させている。麻布十番店の開店当時は150品目ほどだったが、有機栽培を行っている契約農家を地道に開拓して、現在では多い店で約230品目を揃えられる体制を構築できている。最近はビオセボンの認知度が高まり「店舗で扱ってほしい」と生産者のほうからの依頼が増えているという。今後も品揃えを広げることで、来店頻度の向上や店舗全体の売上増につなげる。

 青果同様に売上を伸ばしているのがデイリー商品だ。とくに豆腐は前年と比較して130%ほどで推移している。土屋社長は「1号店開業当時と比べると、オーガニック商品を日常的に購入する消費者がとても増えている」と語る。より日常的に利用してもらえる店をめざし、2号店以降は内装や什器の特別感をあえて出さず、一般的なSMのような雰囲気を演出するようにしている。

ベビー・キッズ向けの商品を大きくコーナー化している。離乳食や菓子、飲料のほか、スキンケア、玩具まで揃える。

 需要を見込み、販売を強化しているのがベビー・キッズ向けの商品だ。「子育てを機に、ふだんの食事や使用する日用品の安全・安心にこだわるようになる女性は多い。麻布十番店では全体の約4割を占めるほど、小さい子供連れの来店客が多いことから対応に力を注いでいる」(土屋社長)。例を挙げると、ベビーフードや子供用の菓子でフランスからの直輸入商品を増やした。日本ではこれらのカテゴリーでオーガニックにこだわる商品がまだ少ないため支持を得ているという。今後は、店内におむつ交換や授乳ができるスペースを設けるなど、子供連れで来店しやすいようにハード面も工夫したい考えだ。

 イートインの活用も積極的に進めている。18年に出店した7店では、最小規模の「東武池袋店」を除いた全店舗にイートインを導入。ビオセボン初の2層での出店となった「横浜元町店」では、2階部分にビオセボン最大規模となる約20席のイートインを設けた。

多くの店舗で外から見える位置にイートインを配置。

 「赤坂店」では、店舗周辺にオフィスや宿泊施設が多いことから、ビジネスパーソンや旅行者向けにカフェやバルとしてのイートインの利用を促している。朝は焼きたてパンや、店頭で扱うオーガニック果実のスムージーを揃えて朝食として提案。夕方から夜にはレジカウンター横でグラスワインとともに、チーズや加工肉を勧める。

「赤坂店」ではレジカウンターでグラスワインとともにチーズや加工肉を販売し、バルとして利用を促している。

 そのほか麻布十番店では、店頭で扱うオーガニック商品にスポットを当てたワークショップをイートインで定期的に開催している。このようにビオセボンの魅力を知ってもらうための場として今後もイートインを活用していく方針だ。

BCB社(フランス)と連携し日本のオーガニック市場開拓に向けてイオンが成長加速へ

店舗数を8店まで広げたビオセボン・ジャポン。同社は20年までに数十店舗体制を構築するという目標を明らかにしており、19年も18年と同等数の出店をしたいとしている。

オーガニック商品の魅力を知ってもらうことも戦略の一つ。

 18年はさまざまな立地に出店したが、今後の出店地の条件として土屋社長は、①住宅立地、②店舗周辺に子育て世代が多い、③来店客の「感度が高い」エリアの3つを挙げている。理想の売場面積は60~100坪で、これらの条件を満たしていれば、路面店だけでなく、ショッピングセンターをはじめ他社の商業施設への出店にも前向きだ。

 同年12月、イオンは本国フランスのBCB社へ出資することを発表した。店舗数を拡大すると同時に、BCB社の商品開発力やバリューチェーン、I T、物流などのノウハウを取り入れ、ビオセボン・ジャポンの成長を加速させるねらいだ。

 土屋社長がとくに期待を寄せるのは、BCB社の商品調達力と、先進的な在庫管理システムだ。

 商品調達では、現在フランスからの直輸入商品は約800品目まで増えている。資本関係を結びBCB社のより厚いサポートを受けることで日本のニーズに即したラインアップに磨きをかける。また商品開発についても連携を図っていくという。

 在庫管理システムでは、発注予測精度の高さに定評がある先進的なBCB社のノウハウを取り入れることで、人手をかけずに店頭での品切れなどを低減させる。そうして浮いた人時を、店頭での試食販売や、生産者を招いたイベントの開催など、オーガニック商品の魅力を知ってもらうための接客に充てていきたい考えだ。

日本のオーガニック市場開拓に向けて、イオンが大きく動き出している。

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