新生小田急百貨店新宿店が、売場面積8割減のなか、模索する百貨店の進化形とは

油浅 健一
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アパレル“撤退”は苦渋の決断

 売場面積が大幅縮小となる中、新宿小田急としての特性を全面に主張するフロアづくりとする一方で、アパレルカテゴリーはごく一部の扱いのみで、実質的に消滅。

 この点について小田急百貨店は「限られたスペースでは満足いただける展開ができないことから、なくした」と苦渋の決断だったと明かす。

 売場スペースが新宿本店の2割程度となり、選択と集中を余儀なくされる中で、売れ筋をより伸ばし、低調なカテゴリーを縮小する現実的な判断が下された形だ。

 一方で、リアル店舗ならではの価値提供を図るべく、イベントスペースやポップアップスペースを開設するなど、コンパクトながらも質にこだわり、ショッピング空間としての満足度キープには、余念がない。

 百貨店らしさ満載だった本館に比べれば、ボリューム感の側面では寂しさは否めない。だが、その不足分を補うべく、強化されたデジタル化はチャレンジングだ。

デジタル強化で、物理的後退を補完

ギフトサロンの商品展開(ORコード表示)
7階ギフトサロンの商品展開

ECでは、本館で取り扱い終了となったアイテムを強化するとともに、リビング雑貨も拡充。来店せずに店頭の商品を注文できる「リモート注文」サービスでは、「町田店」の対象売場を広げ「ふじさわ店」の一部も組み込むなど、物理的な要因で扱えなくなったアイテムをデジタルの活用で補完する。

7階に開設したギフトサロンもECと連携。従来展開していた冠婚葬祭などのフォーマルギフトだけでなく、カジュアルなギフトアイテムの品揃えを増やし、「eギフト」商材も提案。商品ごとにQRコードを設置してECへの誘導を図り、商品の詳細やストーリーをEC上で紹介、購入もできるなどOMO(オンラインとオフラインの融合)化を推進する取り組みを行っている。

さらに、6月よりLINEの新システムを導入。アンケートデータやLINE内の行動データを収集することで、顧客動向を分析。デジタルを最大限に活用することで、ターゲット顧客の特徴や興味にあわせたコンテンツの配信にもつなげ、顧客満足度を落とすことなく、店舗全体のサービス品質の維持向上に努める。

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