他社からベンチマークされることも多いヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)は、お客の購買意欲をかき立てる商品づくり・売場づくりのレベルの高さに定評がある。その技術力の高さは、2022年9月28日にオープンした「ヤオコー八王子鑓水店」(東京都八王子市:以下、八王子鑓水店)からも窺える。本稿では、同店に導入された新商品を写真で紹介するとともに、見た目と品質を両立したヤオコーの商品づくりについて見ていく。
ベーカリーでスイーツを強化
八王子鑓水店は、JR各線・京王相模原線「橋本」駅から北約2kmの多摩ニュータウン再開発地区の一角に位置する。大型商業施設「ビバモール八王子多摩美大前」のテナントとしての出店だ。同店から半径1km圏内には30~40代が多く住んでおり、3~4人世帯のファミリー層が多いエリアとなっている。
トレンドやニーズに合わせて新商品を次々と開発しているヤオコー。八王子鑓水店でも、総菜やベーカリーを中心に多くの新商品が投入されていた。
インストアベーカリーでは、クリームをたっぷり使用した「店内仕込みのミルフィーユ」(298円:以下、本体価格)や、ブルーベリーやいちご、黄桃を使った「フルーツデニッシュ」(2個入り298円、3個入り398円)を新発売。若いファミリー層が好みそうなスイーツを強化した。
また、「世界を旅するバーガー」と題して「スパイシーケバブバーガー」(298円)も導入する。
「寿司屋のおつまみ」コーナーを展開
総菜売場で展開する魚総菜コーナー「漁火(いさりび)」では、一部の既存店で展開している「寿司屋のおつまみ」を八王子鑓水店でも導入。「たこキムチ」(298円)、「かきおろし南蛮酢」(398円)など魚介類を使ったおつまみの品揃えを拡大している。
アジア総菜のコーナー「味庵(あじあん)」では、トマトクリームとコチュジャンで味付けした韓国風の「韓流ロゼチキントッポギ」(398円)を新たに展開する。また、肉総菜コーナーの「幸唐(さちから)」では、手羽先の「旨辛やみつき黒胡椒味」(598円)を新発売した。
青果部門の素材を使った商品では、「エンペラーズゴールドメロン」を使用したカットフルーツを展開。「機械ではなく手作業でカットすることで鮮度感にこだわった」(広報担当者)とのことだ。
そのほか洋日配では、近隣に多摩美術大学があることから、学生の集客を見込んでプリンの品揃えを拡大した。酒類売場では、ヤオコー子会社の小川貿易(埼玉県/大島潤社長)が仕入れる、4種のぶどうをブレンドし、おいしさにこだわりながら低価格を実現したイタリア・ナポリ産の「ピアチェーレロッソ」「ピアチェーレビアンコ」(いずれも750㎖798円)を新発売する。
見た目と品質を両立したヤオコーの商品づくり
ヤオコーの新商品、とくに総菜やベーカリーを見ていると、トレンドやニーズを意識していることはもちろん、つい買いたくなるような見栄えのよさにこだわっていることがわかる。また、商品そのものだけでなく、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)にも注力しており、たとえば八王子鑓水店の青果売場では、色の異なるぶどうやマスカットを交互に並べ、カラーリングを意識した華やかな売場を構築していた。
もちろんヤオコーの場合、見た目だけでなく味や品質のレベルも高い。筆者は今回の取材後に前述の「スパイシーケバブバーガー」と「スイーツデニッシュ」を購入し食べてみたが、前者はパルメザンチーズのかかったバンズに鶏もも肉と野菜を挟み、ケイジャンソースとオーロラソースの味付けがやみつきになる、食後の満足感が高い商品だった。後者はフルーツの酸味とデニッシュやクリームの甘さがマッチした品質の高いスイーツだった。
新商品をお客に購入してもらううえで、「おいしそうに見える」ことは購買意欲をかき立てる重要な要素の1つだ。ヤオコーの店舗を訪れるたびに、その徹底ぶりに驚かされる。食品小売業界では業態を越えた競争が激しさを増しているうえに、最近では値上げが続き、消費者の財布の紐が固くなっている。こうしたなか、お客の関心を惹く商品や売場の重要性はますます高まっている。ヤオコーの思わず“買いたくなる”商品づくり・売場づくりに学ぶところは多い。