ダイヤモンド・リテール・カンファレンス2014開催レポート
オムニチャネル・コマースのネクストステージ
注目企業の実践アプローチと成長を支えるIT戦略
競争優位を築くためのオムニチャネル差別化戦略
ダイヤモンド リテール・カンファレンス 2014開催レポート
小売業に問われるデジタル・シフトとは
(企業戦略における)ユーザーエクスペリエンス向上と
ROIのバランスがオムニチャネル化推進のカギ
小売業変革のキーワードの1つが「オムニチャネル」。このオムニチャネル化は、既存の小売業の仕組みに大きなインパクトを与える。そこで重要になるのは消費者側の変革スピードに追随するための、小売(供給)側のデジタル・シフトだ。SAPは小売業向けソリューションベンダーのハイブリスを傘下に収めオムニチャネル・コマースを強化し、その機動力をSAP HANAをベースにしたリアルタイム・リテーリングソリューションで補完し、従来提供して来た基幹パッケージ機能と組合せることで小売業の変革をサポートしている。
オムニチャネル化で小売業が抱えるジレンマ
デジタル化の推進に対し多くの小売企業は、「消費者側の変化は無視できなくなっており」「それらの施策は先行者優位性があることを理解し」「これらをやり続けるには既存業務・ビジネスのやり方を変化させなければならない」という認識を持っている。ただ、この認識とは異なり、いざ施策となるとそう簡単には推進できないのが実態。つまり、各企業はこれらの施策を推進するためのジレンマを抱えており、それを紐解かないと具体的な施策には至れないのが現状ではないか。
まずデジタル化の変化で挙げられるのは、消費行動が多様化したことに加えて、ECサイトなど競合が確実に増えていることが挙げられる。多くの企業では個店別にマーチャンダイジングを推進され、出店地域における消費者需要に確実にミートさせている。ただ、皆が同様の施策を推進するため、価格以外で差別化する要素を各社が模索している状況だ。
「顧客主義」は今に始まったことではない。現在に置き直すと、そこには確実にジレンマが存在する。品揃えを増やすだけでは在庫リスクが高まる、接客による差別化には教育等の時間を要する、価格・ロイヤルティプログラムだけではマージンが減る、店舗やITで利便性を高めれば投資コストが跳ね上がる…つまり、ユーザーエクスペリエンス(顧客経験価値)と経済性はトレードオフの関係にあり、この2つのバランスが難しいわけだ。
全てのタッチポイントでのユーザーエクスペリエンスを向上
究極の目標は「消費者ニーズを的確に捉えチャンスロスを最小化する」ということ。オムニチャネルということは消費者との複数のタッチポイントを有効に使うということだ。そしてぞれぞれのタッチポイントでユーザーエクスペリエンスを高めなければならないが、そこで重要なのは量ではなくタイミングだ。例えばスマホを持った顧客にどのタイミングで情報を提供するのか。感度が高い顧客ならば、それが不適切なタイミングだと(スマホから)アプリを削除され二度とアプローチできないかもしれない。この様に企業とのタッチポイントの選択権は消費者側に移っている今、そのタイミングが重要だ。
もうひとつ無視できないジレンマがある。既存ITとどう融合させるかだ。オムニチャネル化は既存の仕組みに大きなインパクトを与えている。それを考慮すると複雑性が増す傾向にある。しかもこれまで投資し作り上げてきた仕組みを変革するのには明確な理由が必要。つまり、企業には明らかな制約条件が存在しその中で変革せざるを得ない。