自社ブランドの種類と意味
値段の安さを主張するプライスブランド
図表のように、いくつかの切り口から自社ブランド商品を分類してその違いを明確にしたい。
まずA目的別分類のイプライベートブランド(PB)とロストアブランド(SB)の違いは別号でも述べた通りである。混同している人は多いがまったく意味が違うのだ。
次にBの商品価値で分類すると自社ブランドは4種類ある。そのうち最も種類が多いのが❶プライスブランドである。類似のナショナルブランド(NB)より2~3割ほど売価が低いことが特徴で、お客がそのバリューを認めてくれれば継続購入が期待できる。自社ブランド開発の歴史が古いイオンの例で言うと“トップバリュ”がこれにあたる。
多くの企業が自社ブランド品の開発に着手するのはプライスブランドからである。図表の目的別分類ならSBである。つまり全国的に知名度の高いメーカー製品NBのうち、購買頻度が高く売れ筋として定着した品目を、集客力を高めるために自社ブランド品に入れ替えるのだ。NBをモデルに、品質を維持しながら売価の引き下げに挑戦するものだ。客層が広く、購買頻度の高いベーシックアイテムに多い。
メーカーがNBを普及させるためにはタレントを起用したテレビコマーシャルや営業活動のための人件費など膨大な経費が掛かるが、それがSBならすでに販売実績のあるものだけを自社ブランド化するから、その経費は必要ない。しかも大量に扱うために販売予測が立てやすく、自社物流システムに乗せれば更なる効率化が進み、低価格化しやすいのである。
次に❷コンペティティブブランドは、すでに売れ筋に育ったプライスブランドの中のとくに競争の激しい品種・品目から生まれる。既存のプライスブランドは低価格だが、更なる値下げを実現して他社との競争に勝つことを目的としている。したがってプライスブランドとコンペティティブブランドは並行して売られる。前者がないのに後者だけ作ることはないのである。イオンの例なら“トップバリュベストプライス”がそれにあたる。
更なる低価格化を実現するためには品質のトレードオフが欠かせないが、まずはパッケージの簡略化と味や品質のバラエティーを少なくして一品大量化を進めるなど商品の品質を損なわない部分から簡略化に努める。しかし差別化するには品質のトレードオフは欠かせない。ところがそれは簡単ではないのでコンペティティブブランド品の数は多くないが、競争相手がプライスブランドの品目を増やしてきたら、その出番がやってくる。
❹ジェネリックはコンペティティブブランドよりさらに安い。包装を簡略化し、大容量にするなどして最低価格を打ち出し、安さイメージを強調することが目的だ。しかし常時扱うものではなく、強力な競争相手が出店攻勢をかけてきた時などに用いられるものである。
以上3種類の自社ブランド品の共通の目的は安さの主張である。
独特の品質を実現するクオリティブランド
これとは別に❸クオリティブランドは値段の安さではなく優れた品質を誇る自社ブランドである。原材料が希少、製法が独特など、これまでは高級品にしかなかった特別な品質などを自社開発する。
同じ品質のNBと比べたら割安な価格だが、類似のプライスブランド品より売価は高くなる。イオンの例なら“トップバリュセレクト”がクオリティブランドである。パッケージは黒と金でデザインされ、高級感が感じられるものだ。
値段が高い分、既存商品と比較して明確な優位性がなければ消費者は買わない。したがって
商品開発の教科書 の新着記事
-
2024/12/05
自社ブランドの種類と意味 -
2024/11/05
PB開発が多店舗化の要となる理由 -
2024/10/05
商品開発が後回しになった理由 -
2024/09/09
商品開発の歴史 -
2024/07/18
自社ブランド開発の目的