2023年秋・冬 売上伸長率ランキング ロングセラーの新規ユーザー獲得が成長につながる

文:石山 真紀(フリーライター・売場研究家)
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独自性のある味わいで高いリピート率を獲得

 長引く原材料費・エネルギー価格等高騰の影響に加え、環境配慮の観点から、メーカー各社は価格や容器・容量の見直しを行っている。とくに調味料関連については、お得感のある大容量品を展開するなど、その動きが顕著となっている。

 竹本油脂の「マルホン圧搾純正胡麻油」は、豊かなごまの香りがしっかりと感じられ、まろやかな味わいが楽しめる王道の定番ごま油だ。1 9 年のリニューアル時は150g、200g、300g、450gの4SKU展開だったが、22年4月に700gの大容量タイプを投入。昨今の物価高騰の影響から、お得感のある大容量タイプを選択するユーザーが増えており、700gの需要も拡大している。

 理研ビタミンの「リケンのノンオイルセレクティシリーズ」は、独自製法の「ハイブリッドクラフト製法」によりノンオイルとは思えない深いコクや豊かな風味が楽しめるノンオイルドレッシング。22年に容量・価格・パッケージのリニューアルを行い、一部の商品は味の見直しも行った。

 全面リニューアル以降、売上は右肩上がりで推移しており、中でもパルメザンチーズの豊かな風味とクリーミーな味わいが特徴の「リケンのノンオイルセレクティ〈熟成チーズのシーザーサラダ〉」は好調に推移している。

 誰もが知る定番ブランドでありながら、打ち出し方を変えたことで好調に推移するブランドも出てきている。

 キリンビールの「キリン 氷結® 無糖レモン」は、糖類・甘味料不使用でありながらさわやかな果実味やすっきりとした飲み口で発売以来、健康的価値とともにおいしさを求める幅広い年代から支持されている商品。「キリン 氷結® 無糖」シリーズはグレープフルーツやシークヮーサーなどのフレーバー展開、食事への合わせやすさに加え、飲みごたえや気分で選べるアルコール度数のバリエーションも特徴のひとつで、無糖チューハイという新たなジャンルをつくり上げた。

 農心ジャパンの「辛ラーメン」は1986年の発売以来、旨さと辛さが調和した独自の味わいで人気のインスタントラーメンブランド。即席めんはコロナ期間中、在宅時間の増加に伴い大きく伸長したカテゴリーだが、「辛ラーメン」はコロナ禍が落ち着いた現在も前年比2ケタ伸長が続く。

 また、即席めんの主な喫食シーンは土日の昼食だが、「辛ラーメン」については平日や週末の夜の利用も多く、農心ジャパンではブランドサイトや公式SNSを通じて多彩なアレンジレシピを紹介している。

 コロナ禍が落ち着いたものの、ロシアのウクライナ侵攻による政情不安、長引く原材料価格の高騰、円安などの影響から、消費者の購買意識は依然として保守的だ。先行き不透明な状況下、変わりゆく消費者の購買行動を分析し、売場づくりに生かすことが求められるだろう。

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