小売チェーンの豆腐コーナーで存在感増す「豆腐総菜」、ヒットの理由は?

2024/06/13 05:59
編集プロダクション雨輝
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「思いつき」が生んだヒット商品、集まるチームと技術

 同社の「ひとり鍋」シリーズの売上高は実に40億円を超え、「BEYOND TOFU」シリーズも10億円規模の売上を誇る。しかも新たな購買層を開拓しながら売上高を伸ばしている。「新顧客に訴求できてプラスオンの売上がとれる商品であり、食品スーパー様にも提案しやすい。豆腐総菜は伸びやすい市場との認識も浸透してきて、最近は各社様に売場を拡げていただいている」(鳥越氏)という。

 健康志向や環境負荷を考慮したプラントベーストフードへの需要が高まっていることも、豆腐総菜への追い風といえる。しかし鳥越氏は、「一部の豆腐総菜を除き、健康軸での訴求はしない」と言い切る。

 「たんぱく質や環境面など、豆腐の持つ価値が光るタイミングであることは間違いない。しかし、おとうふはあくまで伝統食品。ヘルシーさやさまざまな効能を言い立てることに違和感がある」と、こだわりを語る。

相模屋食料の工場での製造の様子

 ちなみに鳥越氏によると、斬新な商品開発のきっかけは「思いつき」という。なぜなら、「“優等生”的な商品をつくったとしても、売場から落ちてしまうことのほうが多い」から。市場調査やアンケート結果に商品開発の“答え”はないというのだ。

 そうした同社こだわりの商品が市場に刺さり、売上が伸びていくにつれ、最近は大手食品メーカーをはじめとする他社からの提案が増えているという。その結果、調味料やだしメーカーとの協業により、強力なチームを組織できるようになった。しかし、いざ商品開発チームがそろっても、必ずしも商品化できる技術があるとは限らない。これに対して鳥越氏は、「ベースのおとうふづくりに関しては、我々はプロ中のプロ」と胸を張る。

 同社はこれまで、価格競争にあえぎ破綻の危機にさらされた地方の豆腐メーカー12社(2024年3月現在)を、救済的M&Aによりグループ化してきた。こうして同社には、「おいしいおとうふ」を作るノウハウと、新商品のアイデアを形にする確かな技術が蓄積されている。鳥越氏の言うところの「思いつき」がヒット商品を生み、新しいカテゴリー創出がされ、強力なチームと技が集結し、さらに魅力ある商品が生まれていく、というわけだ。

 豆腐総菜の盛り上がりは、既存の豆腐カテゴリーへの波及効果も生み出している。「豆腐総菜の隣のおとうふの棚にも、お客さまが立ち止まるようになった。2022年は豆腐市場が約30年ぶりに上向きになったというデータもある。豆腐市場全体に多少なりとも寄与できたのではないか」(鳥越氏)。

 安売り競争には未来はない。付加価値を生む豆腐総菜に新商品を投入するメーカーも増えてきた。鳥越氏は、「業界全体が正のスパイラルに入っていくといい」と、好循環の兆しを歓迎している。

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