本物のEDLPと数量管理を導入し「営業利益」を管理する経営へ転換する
コスト上昇続くなか本物のEDLPをめざす
日本の中小食品小売業は、厳しい競争環境に直面している。物価上昇により一時的に収益拡大が見られるものの、各種仕入れコスト、運送費、エネルギーコスト、人件費などの運営コストが増加し、中長期的には利益が圧迫されていく。そのため、持続的な成長を実現するには、適切なコスト管理と競争力の強化が不可欠となる。
消費者の購買力低下や代替品へのシフトが顕著になりつつあるなか、収益性の確保には効率的なコスト管理とサプライチェーンの見直しが重要となる。ユニット・コントロールを活用して売れ筋商品を明確化し、競争力をつけるにはEDLP(エブリデー・ロープライス)戦略とEDLC(エブリデー・ローコスト)戦略の理解が不可欠であり、EDLCを前提とした本物のEDLPをめざすべきだ。
EDLP戦略は、特売や一時的な割引に頼らず、毎日低価格の商品を提供することで消費者の信頼を得る戦略だ。しかし日本の小売業では、EDLP戦略を掲げながらも実際には「ハイ&ロー戦略」を採っているケースが多い。これは、日本のメーカーや卸売業者がハイ&ローでの売上拡大主義を採用し、特売期間に必要以上の商品を仕入れる「フォワードバイイング」によるものである。
これが、EDLP戦略を支えるEDLCを実現するうえできわめて大きな障害となっている「売上原価が下がらない」原因である。
一方ウォルマートでは、プロモーションスペースの商品価格が、定番棚にある商品の売価と同じだ。これは、真の意味でEDLCを実現していることを意味する。継続的に低価格で提供するために、商品政策、原料調達、生産、物流改革によるサプライチェーン全体での改革を実行し、他の大手チェーンよりも10~20%安い価格を実現している。

その基盤となっているのが、リアルタイムインベントリーに基づく「ユニット・コントロール」、自動補充システム、物流システムだ。商品の流れを数量ベースで上流からコントロールすることで、物流や店舗オペレーションを効率化している。
翻って、日本の多くの小売業は「サプライチェーン最適化」よりも「小売業部分最適化」が優先され、「小口多頻度物流」「センターフィー」「返品」「労働提供」など小売業側に都合のよい仕組みが重視されている。この結果、店舗段階以外にもセンターコスト、卸コスト、メーカー物流コストがかかり、調達価格が高騰し、大手でさえ安く調達できないという現状がある。部門、「カテゴリー単位での営業利益管理」への移行をめざし、「売れなくても、儲かる店」に転換すべきだ。
国内小売業界における課題とチャンス
日本の小売業界には建値制度など長年の商慣行が根強く、不透明な販促リベートやセンターフィー、返品制度、追加値引きなどが横行している。これによる複雑なコスト構造が、価格設定の透明性を損ない、無駄なコストを生み出して価格競争力を低下させている。
実際、現時点では
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