オークワ(和歌山県/大桑弘嗣社長)は、2021年秋冬商戦に向け、「独自」「健康」などが特徴の品揃えを拡充する。売場ではPOPを活用して情報を発信、商品の価値訴求にも力を入れる。一方、商勢圏では異業態が台頭、価格競争が激化するなかEDLP(エブリデー・ロー・プライス)を強化、集客力向上も図る方針だ。
上期は「ご当地」商品が伸長
──21年度は下期に入りました。まず上期をいかに振り返りますか。
櫻井 前年度の20年度はコロナ禍の影響で、「巣ごもり」、また内食需要の拡大により、対19年度比約6%増とグロッサリー部の売上高が大きく伸長しました。21年度上期は、その数字が前年実績にあったため、3月から8月までの上期は、対前年比約5%減(推計)との結果になりました。
──そのなかでもとくに厳しかったカテゴリー、商品群、また反対に伸長したものがあれば教えてください。
櫻井 厳しかったのは、前年度上期、一時は在庫切れするほど売れたパスタやパスタソースといった、保存可能、即食性のある商品で、対前期比で90%を割り込みました。反対に伸びたのは、全国各地の「ご当地」商品。ケーキは同7~8%増、麺類は同4~5%増となりました。
ご当地商品は、コロナ禍で旅行を控える風潮のなかで需要が見込めるとの仮説を立て、前年度下期から仕掛けていた商品です。今年度の上期に入ってもよく売れました。
──あらためてグロッサリー部におけるカテゴリー分類と、ここ数年の業績推移を教えてください。
櫻井 当部で扱っているのは①デイリー(日配)②一般食品(加工食品)③菓子④酒⑤米⑥ギフト⑦たばこ、の7つです。
これらの商品は競合店と価格が比べられやすいのが特徴です。当社の商勢圏は近年、競争が激化しています。同業態の食品スーパー(SM)だけでなく、食品の扱いが大きいドラッグストア、またディスカウントストアといった価格訴求型業態の存在感が増しています。そのためコロナ禍前は、対前期比で微減が続き、芳しくありませんでした。
──これに対し21年度下期の秋冬商戦は、どのような方針で臨みますか。
櫻井 価格政策については、競争激化を受け、価格訴求を強化します。今春から、加工食品、日配などで、より低価格を打ち出した500アイテムをEDLP(エブリデー・ロープライス)で提供していますが、これを800アイテムにまで広げます。これによって集客力を上げる一方、「独自」「健康」などを切り口とした付加価値型商品を増やし、差別化を図る考えです。
POPで商品の価値を訴求
──付加価値商品はどのように拡充しますか。
櫻井 独自商品については、昨年から販売をはじめた「オークワブランド」のアイテム数を広げます。
独自商品には「オークワプレミアム」「オークワマルシェ」「オークワセレクト」の3種類があります。プレミアムは、産地、原材料、製法、味、機能性など7項目ある基準のうち、一定の基準をクリアした、いわばこだわり商品です。マルシェは、バイヤーが推薦する「おすすめ」商品。最後のセレクトは、メーカーさまと連携し共同開発した商品です。これらをグロッサリー部の売上構成比で、新たに3%上積みすることを目標にしています。
──独自商品には、具体的にはどのようなものがありますか。
櫻井 たとえばオークワプレミアムのひとつは、日配部門に並ぶ「平飼いたまご」。「平飼い」とは、鶏をケージに入れるのではなく、平らな場所で飼育する方法。自然に近い環境で、ストレスの少ない鶏が生んだ、健康的でおいしく、安全・安心な卵です。この卵をつかったカステラもお客さまから好評をいただいております。また今後、クリスマスケーキやプリンも販売を予定しています。
──独自商品は、売場でいかに価値を訴求しますか。
櫻井 以前なら従業員がお客さまに試食サービスを行うことで、味を確かめていただくことができました。しかしコロナ禍にあっては難しいのが現状です。そこで現在、力を入れているのが、POPによる情報発信です。
たとえばオークワプレミアムの「丸搾りゆずぽん酢」のPOPには、商品や使用シーンの写真とともに、「お酢を入れない製法で、素材本来のおいしさを活かしています。果汁感たっぷりです」という説明文を記載しています。こだわりのポイントや食べ方、おいしさの理由などを端的にまとめ、お客さまに伝わるようにしています。
──そのほか、グロッサリー商品の売場づくりで取り組みはありますか。
櫻井 定番売場では商品の特徴を把握しやすい陳列を意識しています。たとえば「簡便」「家のみ」といった表示のもと商品を分類、並べることで、お客さまが選びやすい売場を工夫しています。とくに近年、関心度の高い「健康」関連商品については各種商品を集め、目立たせています。
これらの施策により、オークワらしさを出し、差別化を図ります。
健康、簡便の注目3アイテム
──21年度秋冬商戦で注目商品はありますか。
櫻井 各社から魅力的な商品が次々と登場しています。コロナ禍も影響し、人々の健康志向はさらに強まっているほか、女性の社会進出により日々忙しい人が増える傾向にあります。このなか秋冬商戦では「健康」や「簡便」商品に注目しています。
まずはヤクルト本社の「Y(ワイ)1000」。1㎖あたり10億個の生きた「乳酸菌シロタ株」を含む乳製品乳酸菌飲料で、一時的な精神的ストレスがかかる状況での「ストレス緩和」「睡眠の質向上」などが期待できるとのことで、興味を持っています。
──ユニークな商品ですね。
櫻井 次はキユーピーの「アマニ油入り和風ドレッシング」「アマニ油入りイタリアンドレッシング」。機能性表示食品のドレッシングで、血圧が高めの人におすすめのアイテムです。以上、2アイテムは健康志向の商品です。
あと1品は、キッコーマンの「うちのごはん 肉おかずの素シリーズ」です。電子レンジで肉料理を手軽に調理できる簡便商材で今回、「スペアリブ風ジューシー豚バラ」と「コク旨トマト ふっくらチキン」の2アイテムが登場。簡単に本格的な味が楽しめる簡便商材は広く支持を得そうです。
これらの商品は、POPを添えるなど、売場でお客さまの目にとまりやすいような演出も行う予定です。
──最後に、今年の秋冬商戦に向けての意気込みを聞かせてください。
櫻井 コロナ禍が2年目に入りましたが、お客さまの購買動向は、依然として予想しにくく、予断を許さない状況が続いています。一方、今後も当社の商勢圏ではさらに異業態が台頭、今以上に競争が厳しくなると見ています。
小売業は「変化対応業」と言われますが、当社の経営環境も大きく様変わりしています。そのなか、今回、お話ししたようにEDLPを強化して集客する一方、独自、また健康関連の商品を打ち出すことで差別化を図り、オークワの特徴を打ち出していければと考えています。