キリンビール株式会社 執行役員 マーケティング本部長 石田明文氏
商品開発から広告、売場まで一気通貫のマーケティングでブランドの価値を伝えていく
――テレビコマーシャルをはじめ、店頭の広告も印象的でした。
石田 お客さまが見て、「飲んでみたい!買ってみたい!」と思う広告やコミュニケーションを実施することができたと思います。そして店頭では、「コマーシャルで見た! 飲んでみたい! 買ってみたい!」と思わせる売場をつくることができました。
店頭を真っ赤に染めて展開しましたが、単にパッケージが深紅だからそうしたわけではなく、どうしたらお客さまがテレビコマーシャルを想起して、興味をもち、商品を購入してくださるか。お客さまの購買心理や購買行動を論理的かつ科学的に検討し、一定の仮説をもってつくり上げたのが、あのような売場です。
――なるほど。では「本麒麟」のヒットの要因は、ズバリ、何でしょうか。
石田 商品開発から広告戦略、売場のプロモーションまで一気通貫のマーケティングができたことです。お客さま起点でニーズをとらえ、商品を開発し、ブランドの価値を伝える。そうすることで、トライアルが進み、そのおいしさに驚いて「また飲もう!」という好循環が生まれました。多くのご支持をいただけたおかげで、当初、年間販売目標は約510万ケース*でしたが、それを大きく上回る約870万ケースを販売しています。(2018年12月中旬現在)
*大びん換算
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マーケティングの質を高め19年は主力ブランドに注力
――非常に好調だった18年ですが、19年の取り組みについて聞かせてください。
石田 ビール類市場が縮小するなか、税制改正によってとくに発泡酒、新ジャンルカテゴリーは縮小するでしょう。それに伴い、ブランド淘汰は進むと見込んでいます。それゆえ、マーケットの変化を見極めながら、19年は主力ブランドに注力する形で取り組んでいきたいと考えています。
ここ数年、数字を重視するあまり、新商品やブランドのエクステンション商品を多く投入してきましたが、先々のことを考えると、主力ブランドのよさをきっちり伝えていくことが大事。そこが勝負になると思っています。
したがって、「一番搾り」については引き続き、その価値を伝え続け、将来的には日本のビールの本流にしていきたい。税率が一本化されても、エコノミークラスは残りますから、そのジャンルにおいて「本麒麟」を、「のどごし」ブランドとともに、柱になるように育成していきたいと考えています。
ブランドが淘汰される一方、クラフトビールのように、付加価値のある商品はこれからも増えていくでしょう。税制改正の影響だけでなく、お客さまの嗜向の変化も後押しして、今後拡大していく市場だととらえています。
RTD市場においては、引き続き拡大が見込めると考えています。なかでも、アルコール7%以上のいわゆる「ストロングカテゴリー」は成長領域。今やRTD内構成比の50%を超えてます。昨年、「氷結®ストロング」シリーズと棲み分ける形で「キリン・ザ・ストロング」シリーズを発売しましたが、カニバリも最小限できちんと差別化されています。今後もそれぞれの強みをしっかり訴求して、多くの支持を得たいと思っています。
――お客さまにブランドの価値をきちんと伝えられるかどうかがカギとなりそうですね。
石田 そうですね。こういう環境下、おそらくメーカー各社は同じ戦略をとることになるでしょう。だからこそ、マーケティングの質をどれだけ高められるか。「本麒麟」で成功した一気通貫のマーケティングを、今年はもっと進化させていかなくてはなりません。とくに店頭での価値訴求は重要です。
一番大事なことは、来店される地域のお客さまのことをしっかり理解すること。日本全国、お客さまは全然違います。「47都道府県の一番搾り」を経験したことで、地域のお客さまを理解する力はずいぶん高まりました。小売店のみなさまはもっとお客さまのことをご存じです。来店されるお客さまのことを理解したうえで、小売店さまと協業しながら、ブランドの価値を店頭からしっかり伝えていくこと。広告と連動した、質の高い売場をつくることで、小売店さまの売上にも貢献できるととともに、もっと愛されるブランドに育成できると確信しています。
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