氷結に麒麟特製、「甘くないチューハイ」が売れるワケ!キリンビールが描くRTD戦略

崔 順踊(リテールライター)
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「食事に合うRTD」が続々と登場

 その一例が、「甘くない氷結」として2020年10月に発売された「氷結無糖シリーズ」だ。同シリーズは「無糖」を謳っているが、スッキリ感や爽快さ、果実由来の味わいやほのかな甘み、お酒のおいしさを同時に実現しながら、食事に合うRTDとして支持を集めており、直近では2022年10月に新フレーバーの「グレープフルーツ」を発売。普段はビールを好む消費者からも支持されており、ビールと並飲するケースも多いという。

 販売の好調ぶりは数字にも表れている。過去20年間に新発売した同社RTDブランド内において「氷結無糖」シリーズは最速で販売数5億本を突破(2020年10月発売以来23カ月での達成、250mℓ換算)。氷結無糖シリーズの好調も手伝って、氷結シリーズの2022年1月~10月の販売実績は2001年の発売以来過去最高売上を記録。「氷結無糖」シリーズについては、当初の約1.2倍に上方修正した、年間販売目標である約1400万ケース(250mℓ×24本換算)を突破している。

「麒麟特製」も食事と合わせたシーンを想定したRTDシリーズの1つだ。2018年に「キリン・ザ・ストロング」というブランドから始まり、2020年に同ブランドをリブランディングするかたちで誕生したこの「麒麟特製」。同シリーズは「飲みごたえ」と「本格的なお酒のおいしさ」の両立を追求したブランドとの位置付けとなる。

「麒麟特製」は「飲みごたえ」と「本格的なお酒のおいしさ」の両立を追求したブランド

 直近では2022年9月に「麒麟特製 レモン酎ハイボール」「麒麟特製 クリア酎ハイボール」、2022年12月にはレモン果皮由来のほろ苦さを特徴とする「麒麟特製 皮ごとレモンサワー(期間限定)」も投入。2022年9月発売の2商品は、レモン浸漬酒に焼酎を使用したウォッカベースのハイボールで、すっきり甘くない味わいに仕上げているのが特徴だ。

 高付加価値型の位置付けとしては、2021年3月発売の「麒麟 発酵サワー」シリーズもある。同シリーズはキリンビール独自の発酵技術を最大限に活用し、発酵由来のおいしさを引き出しているのが特徴だ。自然の恵み「発酵」による、心地よいおいしさが昨今高まる健康志向ニーズを捉え、販売も好調だ。

高付加価値型の位置付けとなる、2021年3月発売の「麒麟 発酵サワー」シリーズ。直近では2022年9月に新フレーバーの「麒麟  発酵ジンジャーサワー」を投入した

 2022年9月には新フレーバーとして「麒麟 発酵ジンジャーサワー」を発売。キリンビールとしては、「麒麟 発酵サワー」を前述の2ブランドと同様に新たなカテゴリーとして育てていく方針だ。

キリンビールが描く今後のRTD戦略

 キリンビールにおけるRTDの今後のビジョンについて、松村氏は「既存ブランドの育成と、新しい領域への挑戦の2軸で考えている。とくに既存ブランドについては『氷結』『麒麟特製』を中心に、新たなチャレンジとしては『麒麟 発酵サワー』の展開で、市場を大きく伸長させていきたい」と話す。

 ほかのカテゴリーとは異なり、RTDは「非計画購買が多い」という特性がある。購買の後押しとなる情報を店頭やパッケージでわかりやすく伝えるほか、デジタル広告を中心に広告投下も積極的に行っていく構えだ。

 小売業と連携した展開にも力を注ぐ。とくに「麒麟特製」シリーズなどは、食品部門と連動したPOPを設置するなど、チェーンストア企業との連携による売場展開も一部で行っている。スーパーマーケットやコンビニエンスストアでの販売が大半を占めるRTDだが、今後は市場拡大を見据え、他業態での展開も拡大する可能性もあるとしている。

 「食事と合う」というコンセプトがお客に伝わり、総菜をはじめとした即食商品、あるいはそのほかの食品と連動した売場展開などが実現すれば、さらなる販売拡大も期待できることだろう。

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