売上が前年から44億円増! 森永製菓「inゼリー」V字回復のカギは「女性」が握っていた?
「非アクティブシーン」も含めた多様な飲用シーンを訴求
コロナ禍というピンチをチャンスに変え、女性向けの新たな市場を開拓したinゼリー。そのマーケティングを主導する水谷氏は「男女の構成比も大きな差はなくなっている」と語る。なお、2022年4月と2018年4月を比較すると、女性の平均購入規模は130%拡大している。
ただ、一方で水谷氏は「女性など特定のターゲットだけに注力したいわけではない」と強調する。
これまでのinゼリーは、ビジネス、スポーツなどアクティブな場面で飲用するイメージが強かった。
これから目指すのは、そういったアクティブなシーンに加えて「子どもからお年寄りまで、日常のさまざまなシーンで飲んでもらう商品」としてのオケージョンの拡大だ。
「あなたには、あなたのinゼリー」というキャッチフレーズを打ち出し、櫻井翔さん、多部未華子さん、斎藤佑樹さんを使用した広告を展開。「inゼリーエネルギー」「inゼリーマルチミネラル」「inゼリーブドウ糖」といった商品ラインナップを、多種多様なライフスタイルに取り入れてもらうプロモーションを強化している。
加えて、開拓に力を入れているのは「テレワークや受験勉強など、非アクティブシーンへの訴求」(水谷氏)だ。
ユニークなのは、考えるためのエネルギーとしてブドウ糖にフォーカスした「inゼリー エネルギー ブドウ糖」による将棋界へのアプローチ。将棋大会への協賛や、女性棋士を登用したインフォマーシャルを放映。「商品ラインナップを増やすことも大事だが、それだけでなく、日常のさまざまな場面でinゼリーを喫食するシーンを訴求することで『私にも必要な商品なんだ』と認識してもらうことをめざしている」(水谷氏)
森永製菓は、2021年に発表した「2030ビジョン」で「2030年にウェルネスカンパニーへと生まれ変わる」と宣言した。in事業をはじめ、「健康」を中核とした企業への転換を図っているところだ。
現に、2021年度のin事業の営業利益(68億円)は、国内全体の営業利益(158億円)の43パーセントを占め、菓子食品事業、冷菓事業をも上回る。同社の成長を牽引するドライバーとしても、inゼリーの今後の展開に注目したい。