スイーツの中でも人気の高いジャンルのひとつ、チーズケーキ。その時々でトレンドはあるものの、北海道を代表するお菓子ブランド「ルタオ」の「ドゥーブルフロマージュ」や、大阪のチーズケーキ専門店「りくろーおじさんの店」の「焼きたてチーズケーキ」など、息の長いロングセラー商品も多く、時代を超えて幅広い世代に愛されるスイーツであることがわかる。
コロナ禍で進む、チーズケーキの「オンライン化&高級化」
昨今のトレンドで見ると、記憶に新しいのが2018~2019年頃に流行した「バスクチーズケーキ」だ。フランスとスペインにまたがる、バスク地方発祥と言われるチーズケーキで、都内を中心に専門店が増えるとともに、2019年3月にローソンが「バスチー」を発売したことで一気に知名度は全国区となった。
その後、日本中がコロナ禍に見舞われる中で盛り上がりを見せてきたのが、自宅にいながらにして購入できる「通販チーズケーキ」。その筆頭は、オンラインのみで展開し、販売後瞬く間に完売となるため入手困難と騒がれた「ミスターチーズケーキ」だろう。
レストランで食べるようなデザートをイメージし、「人生最高のチーズケーキ」をコンセプトに開発された同商品は、バニラ、トンカ豆、レモンを使った香り高い味わいと、とろけるような食感が特徴。以後、同店に続くように、高級路線のチーズケーキ専門店がオンライン上に次々と登場している。
ローソンの新チーズケーキに見る、昨今のトレンド
最近では、ローソンが2022年9月に発売した「濃厚生チーズケーキ」が好調だ。ローソンの「Uchi Café」スイーツ史上6番目の速さで累計販売数100万個を突破し、発売7日で累計販売数は120万個以上。「濃厚生チーズケーキ」の発売に伴い、「バスチー」の販売を終了したことからも、次のトレンドへと移り変わったことがわかる。
「濃厚生チーズケーキ」は、昨今のチーズケーキのトレンドである“とろける食感”と“濃厚な味わい”、“後味の良さ”をテーマに開発された。生地には2種類のチーズをブレンドし、小麦粉は不使用。低温でじっくり湯煎焼きすることで、とろけるような食感を生み出している。
さらに興味深いのは、香りづけに3種類の柑橘(日向夏・いよかん・ライム)を加えている点。先の「ミスターチーズケーキ」以降、チーズケーキにおける香りの要素が重視されているという一例でもあり、従来のチーズケーキの香りづけにはレモン、といった方程式以外の味づくりは今後も増えてくるだろう。
注目!「サステナブル」なチーズケーキ
最後に、消費行動を決める際の新たな指針として近年急速に浸透しつつある「サステナブル」や「エシカル」といった要素を取り入れたチーズケーキも紹介したい。2021年2月にオンラインで発売され、すぐに入手困難なチーズケーキとして話題となった北海道生まれの「チーズワンダー」だ。
北海道・札幌のお菓子ブランド「きのとや」のグループ企業であるユートピアアグリカルチャーが新しく立ち上げたブランドで、最大の特徴は、自社牧場で採れた放牧牛乳を使っている点。牧場の運営には、環境負荷を抑えながら運営する「リジェネレイティブアグリカルチャー(再生型農業)」の手法を取り入れるほか、都市部に近い場所で、森林を再生させながら放牧酪農・養鶏を行なう実験プロジェクトも始動している。
こうしたサステナブルな取り組みのみならず、「チーズワンダー」はその味づくりにも新しさがある。「冷凍配送」であることを逆手にとり、冷凍状態だからこそ可能な風味や食感にこだわった結果、チーズスフレの部分を火入れせずにクッキーと重ねることで、フレッシュなチーズの風味やなめらかな口どけを実現させたのだ。
今回は、お取り寄せやコンビニのチーズケーキを中心に紹介したが、個人のパティスリーのチーズケーキにも、その時々でトレンドの味づくりが垣間見える。とりわけ「食感」と「香り」は、これからもはずせないキーワードになりそうだ。