増加傾向にある食物アレルギー、メーカーによる取り組みも活発化
特定の食べ物を食べることによりアレルギー反応を引き起こす「食物アレルギー」。小児から成人まで幅広い世代にみられる疾患で、その患者数は年々増える傾向にある。アレルギー対応食品に対するニーズや関心の高まりに伴い、メーカー各社の取り組みも広がっており、今後はさらなる市場の拡大が見込まれる。
患者数は年々増える傾向
近年は木の実類による症例が増加
日本の食物アレルギーの患者数は年々増加傾向にあり、その割合は全人口の1〜2%程度、乳児では約10%といわれている。食生活の変化によりアレルギーを起こしやすい食物を食べる機会が増えているほか、食物アレルギーに対する関心の高まりや診療レベルの向上も増加している原因のひとつと考えられている。
そもそも食物アレルギーとは、特定の食物を摂取することにより免疫システムが過剰な反応を引き起こすことをいう。最も多い症状が、じんましん、かゆみといった皮膚症状で、80〜90%の人が発症している。そのほか、咳、粘膜の腫れ、腹痛、嘔吐など、人によって症状は多岐にわたり、ときにはアナフィラキシーという重い症状があらわれることもある。とくに、血圧低下や意識障害など命に関わる危険性を伴うショック症状をアナフィラキシーショックと呼び、消費者庁の調査によると、食物アレルギー患者のうち約10人に1人がショック症状を起こしている。
原因となる食べ物は、年齢とともに変化がみられる【図表①】。0歳では鶏卵が最も多く、鶏卵、牛乳、小麦の3品で96.2%を占めている。1・2歳では、新たに木の実類(くるみ、カシューナッツ、アーモンドなど)、魚卵(いくらなど)、落花生が加わり、3~6歳では木の実類の割合が最も多い。7歳以降は甲殻類が加わり、7〜17歳の原因食物のトップとなっている。小麦は0歳では3位と多く、1歳以降で減少するものの、7〜17歳になると再び増加し、18歳以上では最も割合が多くなっている。
現在、食物アレルギーに対する有効な治療方法はなく、原因となる食物を除去することが予防や治療を行ううえでの原則となる。そのため、厚生労働省では2001年から、アレルギー疾患をもつ人に適切な情報を伝えられるよう、発症件数が多いものや発症したときの症状が重いものについて、食品に使用した場合の表示を食品衛生法上義務づけた【図表②】。
とくに発症者数や重症度が高い「特定原材料7品目」には、えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生が指定されている。また、特定原材料に比べて症例数は少ないものの、アレルギーを起こしやすいとされる21品目については、「特定原材料に準ずるもの」として表示を推奨している。このうち、アーモンドは19年9月に新たに追加された。アーモンドを含む木の実類は、近年小麦を抜いて主要3大原因食物のひとつとなっており、取り扱いには十分な注意が必要だ【図表③】。
食物アレルギー患者にとって食品表示はきわめて重要な役割を果たしているが、特定原材料等の表記には限界がある。そこで、表記方法や言葉は違っても、特定原材料等と同じものであることが理解できる表記や一般的な表記法が代替表記として認められている【図表④】。