無人店舗向けに3つのサービスを提供、まずはマイクロマーケットを攻略 ヴィンクス 取締役常務執行役員 竹内雅則

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──そういう経緯があって、今年の2月16日にパナソニックと業務提携しました。両社の持つ知見・技術・事業基盤・ネットワークなどを相互に活用して新しい購買スタイルの構築やサプライチェーンの高度化など、小売業向けの先進的なソリューション開発を行うという幅広い内容になっています。そして、両社は今年5月に「ローソン 晴海トリトンスクエア店」で、新たな「レジロボ®」の実証実験に着手しました。

竹内 「 ローソン パナソニック前店」の実験を進展させたものです。今回はどんなPOSレジでも導入できる特長を持つ当社の「ANY-CUBE®」を組み込み、小売店が「レジロボ®」を導入しやすい仕様にしています。見た目は、あまり変わっていないように見えるかもしれませんが、汎用性は確実に高くなっており、中身は大きく変わっています。

 パナソニックさんと連携をして、小売業ラッグストア企業もあります。そのほかにも、数社から検討のオファーを受けているところです。

スマートシェルフの可能性

──ヴィンクスの無人店舗ソリューションの3番めは、どういうものですか?

竹内 当社では、「スマートシェルフ」と呼んでいるものになります。

 今話題の「アマゾンゴー」ではないのですが、お客さまが商品を取ったら、そのことを認識するという仕組みになります。

リテールテックに出展したヴィンクスのブース
イシダとの協業で重量センサーによる「スマートシェルフ」が提案された

 今回のリテールテックにおいて展示したのですが、これはかなりの反響がありました。類似するシステムを出している企業があまりなかったことも注目を集めた一因だと考えています。

 ハカリメーカーのイシダ(京都府/石田隆英社長)さんにご協力いただき、減重量からお客さまがいくつ商品を取り、在庫がいくつあるのかわかるというものです。

 技術的には、棚を支える部分に重量センサーが付いています。1SKUの重量を登録してあるので、在庫減が検知できます。現状のかたちなら部分的に導入できます。ただ、ポテトチップスのような軽重量の商品はあまり得意ではない面もあります。

 リアルタイムインベントリーのニーズは、小売業界では大きいので、こういうソリューションは価値があると自負していますが、さらなるイノベーションは必要です。

 もう1つの展示は、棚札の裏側に付いている距離センサーで商品を確認する仕組みです。こちらについては当社の社員が開発しました。あらかじめ商品間の距離を登録しておき、そのすき間が大きくなったら商品が取られた、と認識します。まだ完成形とはいえませんが、大掛かりな仕組みではなくてもできる、ということを私たちも知ることができました。

 「スマートシェルフ」はあくまでも、近未来型店舗(フューチャーストア)を想定しています。その代表格と言っていい「アマゾンゴー」も一般顧客への開放をスタートさせていますが、本格チェーン展開は、まだ先のことでしょう。実際、今回の展示を受けて、「やりたい」という小売業からのオファーはありませんでした。

 コストを多く費やせば、たいていのことはできますが、それでは採算は合いません。ではどうするかについて、私たちも真剣に考え取り組んでいきたいところです。

──カメラを活用した画像認識による無人店舗の可能性はあるのですか?

竹内 今のところ、カメラによる画像認識だけで無人化を図るというのは難しいと判断しています。たとえば、一方向からの撮影なら、裏側から商品を取られてしまうと認識することができません。ただ、カメラを、店舗内を埋め尽くすほど設置して、数で勝負するという方法は考えられなくはありません。

 しかしながら、その場合、損益分岐点は非常に高くなってしまい、そろばん勘定の合わない店舗になってしまうこと必至です。とはいえ、カメラの性能は日進月歩で価格は日に日に下がっているという現実から想像すればペイできるようになる可能性も否定できないところです。

流通系ITリーディングカンパニーへ

──ということは、ヴィンクスのソリューションで最も現実的なのはマイクロマーケットということになりますか?

竹内 そうですね。中国の「ビンゴボックス」は、無人POSとして展開可能な技術レベルと考えていますので、あのかたちであれば日本でも出店は可能です。ただし、小売業の方々が、路面店であのタイプで出したいと考えているのかどうかはわかりません。

──ヴィンクスがビンゴボックス型の店舗を実験するということも考えられますか?

竹内 実は、それを検討しているところです。われわれは小売業出身なので、体内には小売業のDNAも宿っています。今回の取り組みをきっかけに国分グローサーズチェーンさんより商品調達の支援をいただき社内にテスト店舗を出してみようということで動き始めています。数カ月後には1号店を出店します。

 どうなるかはまったく未知の領域になりますが、やってみて初めてわかることも少なくないでしょう。

 その店舗では、AI(人工知能)を活用した在庫の最適化や棚割の模索や自動発注の実験にも取り組みたい。17年にはカラフルボード(現:センシー)に出資しています。AIを活用することで新商品のヒットの可否の見極めや対応も迅速にできるようになるはずです。

──そうしたソリューションの提供の障害になっているようなことはありますか?

竹内 今のところ大きいのは、当社の知名度の低さです。最近は株式を東証一部に上場し、少しずつ知名度も上がってきていますが、まだまだ「パッケージベンダー」ととらえられているようなきらいがあります。

 当社は、小売業の情報システム部門が独立した企業であり、お客さまの情報システム関連でできないことはありません。ちなみに、当社のビジョンは「流通系ITリーディングカンパニー」です。小売業出身というベースがあって、業界をリードしていくというイメージを植え付けていきたいと思います。

 

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