サラヤ、新型コロナウイルスへの有効性を表現する店頭&商品POPに刷新
さまざまなアルコール消毒剤が混在するなか、厚生労働省から医薬品および医薬部外品の消毒剤において、特定の菌種またはウイルスに対する有効性告知が可能という通達がなされた。これを受けて、衛生分野のトップ企業であるサラヤは、関係省庁の確認・アドバイスを受け、店頭&商品POPを刷新。流通業と連携し、エビデンスに基づいた信頼性の高い商品を消費者に提供していく。
店頭で特定ウイルスに対する有効性の告知が可能に
コロナ禍となって以来、暮らしの中でアルコール消毒剤による手指消毒が習慣化した。外出先ではもちろんのこと、家庭にウイルスを持ち込まず、感染予防のためにアルコール消毒剤を常備する消費者は少なくない。
しかしながら、市場にはさまざまなアルコール消毒剤が出回り、本当に新型コロナウイルスに対する効果があるものを見分けるのは難しい。というのも、薬機法※1上、医薬品や医薬部外品の消毒剤は有効性に関して特定の菌種またはウイルス種の名称を記載できないからだ。これは、消費者にとっても、流通側にとっても不都合な事態といえよう。
そうしたなか、2022年2月25日、厚生労働省から通達があった。それは、「医薬品や医薬部外品の消毒剤において、科学的および客観的な根拠があれば、特定の菌種またはウイルス種の有効性を広告などによって情報提供してもよい」というもの。つまり、これまでは「ウイルス・細菌に効く」といった大まかな表現でしか訴求できなかったのが、具体的に菌種・ウイルス種の名称を記載して訴求することができるようになったのだ。ただしそれには、第三者による適正性の審査(=外部機関での評価試験)を経た根拠資料が必要になる。
「この通達はサラヤにとって願ってもないことでした」と話すのは、コンシューマー事業本部 本部長の山田哲氏。
元々、同社はメディカル分野での事業も行っており、医療や介護の現場で使われる製品・サービスを手がけている。当然、その提供にはエビデンスが求められるため、長年さまざまな研究に取り組んできた。09年には微生物学的評価を専門に行うサラヤ微生物研究センターを設立し、信頼性の高いエビデンスデータの取得に注力している。しかも、新型コロナウイルスに関しては、20年4月から大阪大学微生物病研究所と共同研究契約を締結。新型コロナウイルスを用いた有効性評価を行い、実使用に近い環境下での有効性を確認している。
こうした情報をきちんと伝えたいと考えていた同社にとって、今回の通達はまさに歓迎すべきことだった。あとはどう表現するか、だ。
※ 1 「医薬品、医薬機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の通称。2014 年に薬事法から改正された
関係省庁へ広告表現について確認・相談
そこでまず山田氏らが行ったのは、商品および店頭での広告表現について関係する省庁に相談することだった。まず、薬機法や薬剤師法の施行に関する業務を担っている部署に、具体的な広告表現について意見を求めた。「有効性の記載をする場合、強調してはならないことが原則なので、ビックリマークのような強調表現はNGであることや、具体性に欠ける表現も避けるべきといったことをアドバイスいただきました」(山田氏)
こうして新たな表現を検討するなか、別の部署から薬機法上ではOKであっても、景品表示法※2に抵触する恐れがあることから、表現について、もっと検討すべきというアドバイスが得られた。
「いろんなアルコール消毒剤が市場に出回っているなか、本当に有効性があるのかをお客さまは知りたいにもかかわらず、そうした情報を提供できないのはサラヤとしても非常に残念なことでした。しかしルールが改定され“お客さまファースト”の状況になりました。私たちサラヤには有効性を証明するエビデンスがある以上、それを表記して消費者にきちんと伝えたい。そうすることで、感染の収束につなげたい。その思いを伝えるため、何度も関係省庁へ伺いました」(山田氏)
この熱意が事態を進展させる。相談を受けた各省の担当者は専門家の立場からさまざまなアドバイスをくれたのだ。山田氏らの思いに理解を示す一方、消費者が誤解したり不利益を受けたりしないように、広告表現には細心の注意を求めた。例えば、「新型コロナウイルスに効く」という広告表現を使いたくなるが、これは誤解を招くという。今や「新型コロナウイルス」という名称はウイルスの名前にとどまらず、病気の一つとして認知されている。そのため、「新型コロナウイルスに効く」としてしまうと、「効く」という言葉が力をもち、手指消毒剤であるにもかかわらず、飲用してしまう人がいるかもしれないからだ。
「確かに、商品には『手指消毒アルコール』と記載していても、見落とす人がいるかもしれません。関係省庁の方々からの指摘は大いに勉強になりました」(山田氏)
※ 2 消費者に誤認される不当な表示を禁止する法律
今後もエビデンスに基づいた情報提供に努めていく
関連する省庁に確認し、アドバイスを受けながら、サラヤが最終的につくりあげたのが、図Aに示すようなPOPだ。外部機関で評価試験を行い、エビデンスを取得した「アルソフト 手指消毒ローション」、「ハンドラボ 手指消毒スプレーVH」、「ハンドラボ 手指消毒ハンドジェルVS」の3シリーズに付けることができる。記載されたQ Rコードからは試験データの結果を確認することも可能だ。
「このPOPを活用する際には、このまま使っていただきたいと小売業の方々にはお願いしています。この中の一部を取り出して表示したり、文字サイズや文言を変更、アレンジしたりするのは、行政指導に該当する可能性があるため、ご遠慮いただいております。すべてはお客さまに正しい情報を提供するためです」(山田氏)
感染症との戦いに終わりはない。たとえ新型コロナウイルスが収束しても、いずれ新たなウイルスが出現する可能性は極めて高い。だからこそ、アルコール消毒剤などを使った感染予防が重要になる。“お客さまファースト”をモットーとするサラヤでは、新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザやノロウイルス、アデノウイルスなどさまざまな感染予防に関して、今後もエビデンスに基づいた信頼性の高い情報提供を行っていく考えだ。