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中国の外食チェーンが頭を抱える、電子クーポンの「代理注文」とは

牧野 武文(ライター)
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 中国の経済は不思議な状態になっている。2024年の実質GDP成長率は5.0%、社会消費品小売総額(個人消費)は対前年同期比3.5%増、可処分所得は同5.1%増と決して悪い数字ではない。しかし、消費者信頼感指数(CCI)※が25年1月で87.5と非常に低い。100で中立なのだから、消費者は非常に暗い見通しを持っていることになる。

 この最大の原因は不動産価格の値下がりだ。資産が目減りしていることから、消費マインドが冷え込み、消費者は目先の出費である昼食や外食にすら支出を惜しむようになっている。こうした状況下、各飲食チェーンは3元(約60円)の朝食セットを用意し、ファストフードチェーンでは10元台前半の格安セットで集客を図らざるを得なくなった。

 このような格安セットは「窮鬼セット」(貧乏人セット)と呼ばれ、格安でイタリア料理が楽しめるサイゼリヤは「窮鬼天国」という異名がついた。

※編集部注:中国全土の20の都市から15歳以上の700人を対象に、現在の経済状況に対する消費者の満足度と将来の経済動向に対する期待を0(極端な悲観主義)から200(極端な楽観主義)のスケールで指数化した指標。100は中立を示す

「代理注文」で格安利用が拡大

 各飲食チェーンはライブコマースを積極的に行い、お得な回数券式のクーポンを販売している。クーポン利用だけでは利益は出ないか、もしくは赤字だが、客数を維持し、同時に新メニューを販売して利益を上げる作戦だ。

 しかし、消費者のほうが賢かった。彼らは「代理注文」という、さらに安く利用する手段を編み出し、新メニューですら半額以下で利用するようになっている。

 ECサイト「タオバオ(taobao.c o m)」やタオバオ系列の中古品フリマサイト「閑魚(goofish.com)」などで検索すると、さまざまな飲食チェーンや映画館などのクーポンが見つかる。価格はまちまちだが、多くの場合、半額以下の設定になっている。

 それらのクーポンを購入すると、すぐにクーポン用のQRコードが送られ、店頭でQRコードを提示することで利用できるというものだ。多くの人が、これから利用する飲食チェーンの店頭で、スマートフォンから代理注文を検索し、クーポンを購入している。

クーポン利用は誰も止められない状況に

 利用されるクーポンは、飲食チェーンが銀行などに提供しているものだ。昨今、デビットカードやその他の月会費・年会費を支払う必要があるサービスで、利用者の流出が止まらない。

 みな、利用する頻度が少ないサービスは退会して会費を節約しようと考えるからだ。そこで、会員サービスとして各飲食チェーンと提携し、

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