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米卸売物価、8月は前年比で11年ぶり伸び率 高インフレ継続示唆

米テネシー州クロスビルのウォルマート店舗
8月の米卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は前年同月比8.3%上昇し、比較可能な2010年11月以降で最大の伸びを記録した。2008年3月、テネシー州クロスビルのウォルマート店舗で撮影(2021年 ロイター/Brian Snyder)

[ワシントン 10日 ロイター] – 米労働省が10日発表した8月の卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は前年同月比8.3%上昇した。比較可能な2010年11月以降で最大の伸びを記録し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が引き続きサプライチェーン(供給網)を圧迫する中、高インフレが当面続く公算が大きいことを示唆した。

市場予想は8.2%上昇。7月は7.8%上昇していた。

FHNフィナンシャルのシニアエコノミスト、ウィル・コンパーノレ氏は「サプライチェーンのボトルネックは、年初の大半の予想よりも長期かつ激しく続いている。広範囲にわたる労働力不足は、生産者が対応している主な投入問題の一つだ」と指摘。「これは消費者物価の上昇がしばらく続くことを意味する」とした。

前月比では0.7%上昇し、伸びは市場予想の0.6%を上回った。7月までの2カ月間はそれぞれ1.0%上昇していた。

同時に、インフレがピークに近づきつつある兆候も示された。変動が大きい食品・エネルギー・貿易サービスを除いたコア指数は前月比0.3%上昇と、昨年11月以来の小幅な伸びにとどまった。7月は0.9%上昇していた。

同コア指数は前年同月比では6.3%上昇と、14年8月以来の大幅な伸びとなった。

また、食品・エネルギーを除いた指数は前月比0.6%上昇。7月は1.0%上がっていた。8月は前年同月比で6.7%上昇した。

ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのチーフ米国エコノミスト、ルベラ・ファローキ氏は「インフレが引き続き、旺盛な需要や供給の制約といったパンデミックの影響を受けている」と指摘。「需要の影響は今後数カ月で薄まる公算が大きいが、新型コロナに伴う混乱が継続すれば、サプライチェーンを発端とする一段のリスクが予想される」と述べた。

8月の内訳は、モノが前月から1.0%上昇。7月は0.6%上昇していた。食品が2.9%上昇したほか、運輸・倉庫が2.8%上昇した。

サービスは0.7%上がった。貿易サービスが1.5%上昇し、サービス全体の伸びの3分の2を占めた。

オックスフォード・エコノミクス(ニューヨーク)の米国担当リードエコノミストのナンシー・バンデン・ホーテン氏は「パンデミックの影響で供給が制約されているため、年末にかけて価格上昇圧力がかかる。ただ、国内需要が軟化しているため、卸売物価は今年秋から2022年にかけて徐々に緩和するだろう」との見通しを示した。

アリアンツ・インベストメント・マネジメントのシニア投資ストラテジスト、チャーリー・リプリー氏は、8月の卸売物価を受け、「インフレ圧力が緩和されているようには見えず、今後数カ月間は消費者に影響を与え続ける」とした。

FWDBONDSのチーフエコノミスト、クリス・ラプキー氏は「インフレの危険性は一度物価が上昇すると元に戻らず、経済、生産者、消費者全てが、よりコストの高い世界で生活しなければならなくなることだ。そのような世界では多くの人々がギリギリの生活を過ごす以外の手段がなくなる」と語った。