[北京 9日 ロイター] – 中国国家統計局が9日発表した5月の生産者物価指数(PPI)は前年比9.0%上昇し、2008年9月以来の高い伸びとなった。消費者物価指数(CPI)も同1.3%上昇した。3カ月連続の上昇となったが、伸び率は予想を下回った。
市場では、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を受けた景気刺激策が世界的なインフレを加速させ、各国中央銀行が政策引き締めを余儀なくされることで景気回復を抑制する恐れがあると懸念している。
ロイター調査では、PPIは前年比8.5%の上昇が見込まれていた。4月は同6.8%上昇だった。
国家統計局によると、PPIの上昇は原油や鉄鉱石、非鉄金属価格の大幅高が背景にある。商品価格は今年に入り、ロックダウン(都市封鎖)解除後の景気回復と世界的に潤沢な流動性を受けて急上昇している。
前月比では1.6%上昇で、4月の同0.9%上昇から上昇ペースが加速した。
統計局によると、石炭火力発電所が夏場に急増する電力需要に対応するため一般炭の在庫を積んでいることから、石炭採掘・洗浄部門の伸びが前月比10.6%と、前月の2.8%から大きく加速した。
中国人民銀行(中央銀行)は、商品価格高と昨年のベースが低いことにより第2、第3・四半期のPPI上昇率はさらに押し上げられる可能性があるとしていた。
当局は商品価格の高騰を抑制し、消費者物価への転嫁を防ぐ措置を取る方針を表明した。PPIの上昇はまだCPIにはほとんど反映されていない。
統計局によると、月間ベースでは、冷蔵庫やテレビ、ノート型パソコン、建設資材、夏物衣料などの販売で、工場の投入コスト上昇分が消費者に転嫁され始めているものの、転嫁幅は小幅にとどまっているという。
キャピタル・エコノミクスの中国担当エコノミスト、ジュリアン・エバンズ・プリチャード氏は「PPIはおそらくピークに近い。今後数四半期に(CPI上昇率が)2%を大きく上回ることはないだろう」と語った。
華宝信託のチーフエコノミスト、ニー・ウェン氏も、PPIは近くピークを打つ見通しだと指摘。その上で「心配なのは、PPIが長期にわたって高止まりする可能性で、中流や下流部門の企業がコスト高を吸収できなければ、経済的な課題をもたらすだろう」と述べた。
5月CPIの上昇幅は8カ月ぶりの大きさだったが、市場予想の1.6%上昇は下回った。政府の目標である3%も大幅に下回っている。4月は0.9%上昇だった。
食品は前年比0.3%上昇。4月は0.7%下落していた。豚肉価格の下落が続いているものの、淡水魚や卵の価格上昇に押し上げられた。
航空運賃、ガソリン、ディーゼル燃料などを含む非食品価格の伸びは5.5%に加速。5月初めの労働節の連休が影響したとみられる。