アングル:コロナ禍で在庫膨張、欧米アパレル苦境で下請けも痛手

ロイター
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バングラデシュの衣料品工場
2月8日、欧米のアパレル小売店が軒並み過剰な在庫を抱え、春物の発注を減らさざるを得ない状況だ。バングラデシュの衣料品工場で7日撮影(2021年 ロイター/Mohammad Ponir Hossain)

[リスボン/ダッカ 8日 ロイター] – 欧米のアパレル小売店が軒並み過剰な在庫を抱え、春物の発注を減らさざるを得ない状況だ。このためサプライチェーンを管理する商社はなかなか代金を回収できず、バングラデシュの縫製工場も苦境に立たされている。

これは昨年散々な目にあった世界のアパレル業界が抱いていた、今年こそ業況が回復するだろうとの期待が無残に打ち砕かれてしまった事実を物語る。その原因は、新型コロナウイルス感染急増に伴ってロックダウンが再び導入され、ワクチン接種も国によって進展にばらつきが見えることにある。

一部の大手小売店は、通常なら年末商戦で売り切ってしまえたはずの昨年の商品がまだ手元に残っている。例えば英プライマークはロイターに、2020年春/夏物の在庫が約1億5000万ポンド(約220億円)相当、秋/冬物が2億ポンド相当あると明かした。コンサルティング会社マッキンゼーの見積もりでは、世界全体の店頭と倉庫にある売れ残り衣料品は1400億-1600億ユーロ(約17兆8000億ー20兆3000億円)相当と、通常の2倍を超えている。

英マークス・アンド・スペンサー(M&S)と独ヒューゴ・ボスは、今年の春物の発注を例年より減らしたと述べた。

米百貨店サックス・フィフス・アベニューの元社長で現在はプライベートエクイティのカスタネア・パートナーズの執行パートナーを務めるロン・フラッシュ氏によると、小売店は品数を絞り、発注のリードタイムを短縮する姿勢を維持している。「大半のブランドは仕入れ期間をかなり切り詰めており、リードタイムは非常に短い。誰もが買い付けにとても慎重になっていると思う。多くのブランドが支払いを遅らせていることも知っている。それは確かだ」という。

実際、香港を拠点に50カ国で1万以上の衣料品工場を運営している商社の利豊はロイターに、一部の小売店から代金決済時期の先送りを求められたと述べた。それ以上の具体的な状況は明らかにしていない。

工場にしわ寄せ

その結果としてバングラデシュなど衣料品の主な製造拠点に痛手が波及しつつある。同国の経済は衣料品輸出が頼みの綱だが、工場は稼働を続けるのに四苦八苦している。

バングラデシュ衣料品製造・輸出協会が50の工場に対して行った調査では、受注規模が例年のこの時期より3割少ないとの回答が得られた。クリスマス前に欧州のほとんどの地域がロックダウンを実施し、年明けに追加的な規制措置を講じたことが打撃になった。

北米や欧州の小売店などを取引先としているダッカのある工場オーナーは「注文は普通3カ月前に届くが、今年はまだ3月の注文が何もない。工場の稼働率は25%だ。幾つかの注文で2月までは操業できるものの、その後どうなるかは分からない。われわれが生き延びる方法はこうだと言うのは難しい」とため息をつく。

アジア6カ国の衣料品メーカー連合組織スター・ネットワーク代表で、自身もバングラデシュに4つの工場を所有するミラン・アリ氏も同様の悩みを抱える。ロイターに「本来ならこの時期は少なくとも3月まで工場がフル稼働し、秋/冬物の注文が大量に舞い込んでいるはずなのに」とこぼした。

世界中の小売店向けに衣料品を製造しているダッカの別の工場オーナーは、環境に順応するのが困難だと嘆く。「われわれはもともと生地を生産していて、衣類生産に切り替える準備をしていたところで、取引先から発注をいったん見送ると言われた」と語った。

パジャマ需要

店舗閉鎖が夏まで長引きそうな恐れが出てきたことから、一部の小売店は新規発注の前にできるだけ多くの過剰在庫を処分しようとしている、と繊維リサイクル・再販売企業パーカー・レーン・グループはロイターに指摘した。

同社のカサーディアン最高経営責任者(CEO)によると、月平均で150万点だった衣料品過剰在庫の取り扱いが1月に400万点を超え、月間で過去最高に達した。

ユーロモニターの試算に基づく昨年のアパレル業界全体の売上高は2019年比で約17%減少した。一方今年の売上高については予想レンジが非常に広がっており、悲観的なマッキンゼーは15%減だが、ユーロモニターは11%増と見込んでいる。

では業界に明るい要素はないのか。ロックダウンをきっかけにしたパジャマ需要の活発化は、一部にとってほっとできる材料かもしれない。

M&SのロウCEOは先月、「一般的な英国民の流行を知りたいなら教えよう。それは再びパジャマを着ることだ」と述べた。ヒューゴ・ボスもパジャマ需要に目を向け、ビジネス服のラインアップを簡素化するとともにカジュアル服の品ぞろえを拡大していく方針を表明している。

ただそれで恩恵を受けられない工場オーナーもいる。スター・ネットワーク代表のアリ氏は「パジャマ需要は過去最高水準にある」と認めながら「誰でもパジャマを製造できるわけではない」と話している。

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