米GDP、第2四半期は33%減 コロナ禍で過去最大の落ち込み
[ワシントン 30日 ロイター] – 米商務省が30日発表した第2・四半期の実質国内総生産(GDP)速報値(季節調整済み)は年率換算で前期比32.9%減と、統計の記録を開始した1947年以来最も大きな落ち込みとなった。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により個人消費や企業支出が大幅に低迷した。新型コロナの感染件数が再び増えていることで、始まったばかりの経済回復も脅威にさらされている。市場予想は34.1%減だった。
第2・四半期GDPは、これまでの最大の落ち込みだった1958年第2・四半期の10%減と比べ、3倍以上の減少幅となった。第1・四半期GDPは年率で5.0%減だった。
第2・四半期の落ち込みの大半は、新型コロナの感染拡大を抑えるために3月中旬にレストランやバー、工場、その他の事業が閉鎖され、経済がほぼ停止状態となった後の4月に起きた。
経済活動は5月から持ち直し始めたが、新型コロナの感染件数が再び増える中で経済活動のペースは鈍化している。人口が多い南部や西部の被害が多い地域では当局が事業を再停止するか経済活動再開の動きを止めたところもある。第3・四半期に経済が大幅に持ち直すとの期待が後退した。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は29日、経済活動が鈍化しているとの認識を示した。FRBは金利をゼロ近辺に維持し、経済に資金を供給し続けると確約した。
ロヨラ・メリーマウント大学(ロサンゼルス)の金融・経済学教授、ソン・ウォンソン氏は「景気は第2・四半期に底割れした」と述べる。「見通しはあまり良くない。米国人はソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)を守っておらず、感染率は受け入れ難いほど高い。つまり、経済成長が加速することはない」と指摘した。
GDP急減や軟調な回復を背景に、米政権と議会に対して追加的な景気刺激策に合意するよう圧力がかかる可能性がある。トランプ大統領は29日、合意は急いでいないと発言した。11月3日の大統領選を3カ月後に控えるトランプ氏は、パンデミックや経済危機、人種差別への抗議デモの対応で苦戦し、支持率が急低下している。
米ノートルダム大学メンドーサ・カレッジ・オブ・ビジネスの財政学教授、ジェーソン・リード氏は、合意を急いでいないとのトランプ氏の発言は「信じ難い」と指摘。「(景気対策が次々と失効する)財政の崖が迫っており、コロナ感染の抑制はもちろんのこと、議会が新たな景気対策で速やかに合意することが不可欠だ」と述べた。
エコノミストは、過去最大規模の3兆ドル近くの景気刺激策がなければ経済はもっと落ち込んでいたと指摘。景気刺激策は企業向けの従業員の賃金を補填する融資制度や失業給付の週600ドルの上積みなどで構成されるが、失業給付の上乗せは8月1日に失効する。また、多くの企業がこれまでに融資資金を使い果たしているという。
GDPの内訳では消費支出が34.6%減少し、過去最大の落ち込みを記録。前四半期は6.9%の減少だった。小売関連では百貨店のJCペニーやニーマン・マーカスなどが経営破綻した。
企業投資も27%減少。このうち機器投資は37.7%減少し、5四半期連続で縮小した。コロナ禍に伴う原油安の中、鉱物探査など非住宅構築物への支出も34.9%減少した。住宅投資は38.7%減。政府調達は2.7%増だった。