[パリ 16日 ロイター] – 国連食糧農業機関(FAO)と経済協力開発機構(OECD)は16日、新型コロナウイルスの感染拡大により世界経済が景気後退(リセッション)に陥る中、食糧消費の減少が農産物価格の急落という「市場ショック」を引き起こす恐れがあるとの見解を示した。
新型コロナ危機の中でも食糧生産量は総じて安定しており、農産物市場では在庫が過剰に積み上がり、相場が下がる恐れがあると指摘。
「新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が引き起こしたマクロ的な経済ショックにより、農産物の価格に押し下げ圧力がかかるとみられる」とし、今年は「歴史的に大きな市場ショック」が起きる可能性があると懸念した。
植物油と動物由来の産品の方が、米や小麦などの主要生産物よりも打撃が大きいとした。
今回の見通しは、OECDとFAOが公表した2020─2029年の農業見通しの一部で、新型コロナが農産物市場に与え得る影響について両機関が分析を公表するのは初めて。
新型コロナはすでに農産物を押し下げる要因となっている。レストランが営業を停止して燃油消費が減る中、米トウモロコシ価格は10年ぶりの安値に落ち込んだ。
封鎖措置が緩和される中で一部の商品価格はここ数週間で持ち直したが、FAOとOECDは短期的な見通しは依然不透明だと警告した。
OECDのグリア事務総長はオンラインで実施した記者会見で、「市場は最初のショックをうまく乗り切った」とする一方で、「発展途上国でウイルスが拡大する中では、気を緩める余裕はない」と語った。
新型コロナの影響で不透明感が漂うものの、OECDとFAOは20─29年の農産物価格について、実質ベースで小幅に下落する基本シナリオに徐々に戻るとの見方を示した。
市場が中国のアフリカ豚熱(ASF)のまん延から持ち直す中で、豚肉を中心とした食肉価格はより大きく下落するとみられるという。